建物所有を目的とする土地の賃貸借に関し、あらかじめ賃貸借の存続期間を定めなかつたときは、特段の事情のない限り、右賃貸借の期間は、借地法二条一項により、堅固建物については六〇年、非堅固建物については三〇年と法定され、民法第六〇二条所定の期間を超えるから、右賃借権の対抗要件具備が根抵当権設定登記後なされた場合には同法第三九五条は適用されない。
存続期間の特約のない土地賃借権と根抵当権との関係。
借地法2条,民法395条
判旨
建物所有を目的とする土地の賃貸借については、期間の定めがない場合であっても借地法の規定(旧借地法2条1項)により法定期間が民法602条の制限を超えることになるため、民法395条(旧法)の短期賃貸借保護の規定は適用されない。
問題の所在(論点)
建物所有を目的とし、かつ期間の定めのない土地賃貸借について、民法602条所定の期間を超えない「短期賃貸借」として、抵当権設定登記後の賃借権に民法395条(旧法)の対抗力が認められるか。
規範
建物所有を目的とする土地の賃貸借においては、期間の定めがない場合であっても、借地法の適用によりその存続期間は法定の期間(堅固建物60年、非堅固建物30年)となる。その結果、民法602条に定める期間(山林10年、その他の土地5年)を当然に超えることになるため、処分権限のない者がなす場合を除き、同条の制限内の期間であることを前提とする民法395条(旧法)の短期賃貸借は成立する余地がない。
重要事実
上告人は、本件土地に根抵当権が設定され、その登記がなされた後に、建物所有を目的として本件土地を賃借した。この賃貸借契約において、存続期間に関する特段の定めはなされていなかった。その後、根抵当権が実行され、競落人(被上告人側)に対して、上告人は民法395条(旧法)の短期賃貸借としての対抗力を主張して土地の明け渡しを拒んだ。
事件番号: 昭和37(オ)995 / 裁判年月日: 昭和39年2月25日 / 結論: 棄却
一 一時使用のための土地賃借人が七〇才をこえる老人であるからといつて、これに対し右賃貸借を解除して建物収去土地明渡を求めることは、原審確定の事実関係のもとで権利濫用とはいえない。 二 借地契約にあたつて賃借人が第三者の無断建築物を買い取り右居住者を立ち退かせる約定があり、賃借人において、これを買い取つたといういきさつが…
あてはめ
本件賃貸借は建物所有を目的とするものであるから、借地法(旧法)2条1項が適用される。同条項によれば、期間の定めがない場合、存続期間は堅固建物であれば60年、非堅固建物であれば30年と法定される。この期間は、民法602条が定める土地の短期賃貸借期間(5年)を明らかに超えるものである。したがって、本件賃貸借は民法602条の制限内にある短期賃貸借には該当せず、同法395条(旧法)による保護を受けることはできない。
結論
本件賃貸借には民法395条の適用はなく、上告人は根抵当権実行による競落人に対して賃借権を対抗することができない。したがって、上告人の抗弁は失当であり、請求は認容される。
実務上の射程
本判決は旧法下の事案であるが、建物所有目的の土地賃貸借が当然に長期に及ぶという性質を重視し、短期賃貸借保護制度(現行法では廃止され、明渡し猶予制度へ移行)の適用範囲を厳格に限定した。現在の実務上も、建物所有目的の借地権が借地借家法の適用により長期化する性質を理解する上での基礎となる判断である。
事件番号: 昭和35(オ)1066 / 裁判年月日: 昭和37年2月6日 / 結論: 棄却
地主の長男が医学修業中であり、卒業後その土地で医業を開始することを予定していたので、借地期間を右医業開始確定の時までとするため、契約にあたり、地上に建築せらるべき建物を戦災復旧用建坪一五坪のバラツク住宅と限定し、特に一時使用を条件とする旨契約書に明記されていた場合には、たとえ右開業時期が明確に定まつていなかつたため、一…
事件番号: 昭和38(オ)235 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
準備書面及び書証の表示文言に判示のような記載があっただけでは、当該要証事実の主張があったとは見られない。
事件番号: 昭和29(オ)346 / 裁判年月日: 昭和30年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法9条(現・借地借家法25条)の「一時使用」にあたるかは、賃貸借の目的、期間、地上建物の種類・構造、賃料の多寡等から客観的に判断される。本判決は、原審の認定した事実関係に基づき、本件土地の賃貸借が一時使用のためのものであると認めることが可能であると判示し、上告を棄却した。 第1 事案の概要:本…