判旨
借地権者が借地上に建物を所有していても、建物登記が土地の所有権移転登記後になされた場合には、建物保護法1条(借地借家法10条1項)による対抗力は認められない。
問題の所在(論点)
土地の譲受人が所有権移転登記を完了した後に、借地人が借地上の建物の保存登記を具備した場合、借地人は当該譲受人に対して借地権を対抗できるか。
規範
建物保護に関する法律1条(現行の借地借家法10条1項)に基づく借地権の対抗力は、借地上の建物について保存登記がなされることによって生じる。もっとも、この対抗力は登記を備えた時点から発生するものであるため、当該登記以前に土地の所有権を取得し登記を了した第三者に対しては、当該借地権を主張することはできない。
重要事実
被上告人(土地取得者)は、本件土地について昭和34年3月25日に所有権取得登記を完了した。一方で、上告人(借地人)が主張する借地上の建物について、上告人が保存登記を経たのは同年9月7日であった。上告人は、建物保護法1条の規定に基づき、被上告人に対して借借権を主張できるかどうかが争われた。
あてはめ
本件では、被上告人が土地の所有権登記を了した時点(昭和34年3月25日)で、上告人の建物登記は未だ存在していなかった。上告人が建物保存登記を了したのはその約5ヶ月半後(同年9月7日)であり、対抗要件の具備に先立ち被上告人が完全な所有権を取得したといえる。したがって、上告人は対抗要件の具備が遅れたことにより、第三者である被上告人に対して借地権を対抗できないと解される。
結論
上告人は、建物保護法1条に基づく借地権の対抗力を被上告人に対して主張することはできず、土地の明け渡しを拒めない。
実務上の射程
対抗要件具備の前後関係が勝敗を分かつという不動産物権変動の原則を確認したものである。また、使用貸借については対抗力を認める規定がないため、当然に第三者に対抗できないとする点も実務上重要である。
事件番号: 昭和34(オ)954 / 裁判年月日: 昭和35年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の時効取得者は、時効完成後に当該不動産を取得し登記を経た第三者に対して、自らも登記を備えなければ、時効取得をもって対抗することができない。 第1 事案の概要:被上告人は、本件宅地の所有権を有しており、当該宅地の明渡し等を求めた。これに対し、占有者である上告人は、当該土地を時効取得したと主張し…
事件番号: 昭和35(オ)221 / 裁判年月日: 昭和36年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地権者が借地法等の対抗要件を具備していない場合、第三者である新所有者の善意・悪意を問わず、借地権を対抗することはできない。 第1 事案の概要:宅地の所有者が交代し、新所有者が旧所有者から宅地を取得した。これに対し、以前から当該宅地を使用していた借地権者が、自らの借地権を新所有者に対して主張した。…
事件番号: 昭和33(オ)711 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】競落許可決定により土地の所有権を取得した者は、建物保護法1条(現借地借家法10条1項)に基づく借地権の対抗を受ける「第三者」に含まれる。 第1 事案の概要:被上告人(賃借人)は、昭和21年頃に建物所有目的で本件土地を賃借し、昭和27年10月に土地上の建物について所有権保存登記を経由した。その後、上…