盗難の時より二年を経過したときは、被害者は占有者に対し盗品の回復を請求することが不可能となつて、被害者はその所有権を喪失する。
民法第一九三条の期間徒過のため盗品の回復請求ができなくなれば被害者はその所有権を失うか。
民法193条
判旨
民法193条に基づき、盗難等の被害者が占有者に対して回復請求権を行使し得る期間は盗難の時から2年間に限られ、右期間を経過したときは被害者の所有権は消滅する。
問題の所在(論点)
民法193条に規定される「2年間」の経過によって、元の所有者の所有権は確定的に喪失するか。また、その結果として、盗難に関与した者に対する不法行為に基づく損害賠償請求の成否に影響を及ぼすか。
規範
民法193条の規定は、盗難または遺失の時から2年間、被害者が占有者に対して回復請求権を認めるものであるが、この期間は除斥期間としての性質を有する。したがって、2年間の期間を経過したときは、被害者はもはや所有権の回復を求めることはできず、その所有権を当然に喪失するものと解するのが相当である。
重要事実
被害者(被上告人)の所有する馬匹が、昭和26年10月13日に第三者Eにより窃取された。その後、加害者(上告人)およびFの手を経て、同年11月2日頃、事情を知らない善意の買受人Dに売却された。被害者は、盗難の時から2年以上が経過した昭和34年に至るまで、Dに対して何ら権利回復の請求権を行使していなかった。
あてはめ
本件における馬匹の盗難被害は昭和26年10月13日に発生している。これに対し、原審の口頭弁論終結時である昭和34年12月1日に至るまで、被害者から占有者に対する有効な権利回復請求権の行使は認められない。そうであれば、盗難から2年の期間が経過した時点で、被害者の馬匹に対する所有権は消滅したといえる。所有権が喪失した以上、その後に不法行為による損害賠償義務の有無を争う前提として所有権の存続を主張することはできない。
結論
盗難から2年を経過したことにより、被害者の所有権は消滅している。したがって、被害者が依然として所有権を有することを前提とした上告人の主張は採用できず、上告を棄却する。
実務上の射程
即時取得(192条)の例外としての193条につき、期間経過による所有権の帰属を明確にした判例である。答案上は、盗品・遺失物の返還請求の可否を論じる際だけでなく、不法行為等で所有権喪失の有無が争点となる場合に、2年の経過をもって確定的に所有権が占有者に移転(被害者において喪失)することを論証する際に活用できる。
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