建物の賃貸借が国税徴収法(昭和三四年法律第一四七号による改正前のもの)に基づく滞納処分による差押登記後になされた場合には、たとえ賃借人が建物の引渡を受けても、右賃貸借は公売処分により建物の所有権を取得したものに対抗することはできないものと解するのを相当とする。
滞納処分による差押登記後の賃貸借の対抗力。
借家法1条
判旨
滞納処分による差押登記後に成立した建物賃貸借は、建物の引渡しがあっても公売処分による買受人に対抗できず、賃貸人の義務は履行不能となるため、賃借人は敷金返還請求をなし得る。
問題の所在(論点)
滞納処分による差押登記がなされた後に締結された建物賃貸借の賃借人は、その後の公売処分による買受人に対し、引渡しを具備していても賃借権を対抗できるか。また、対抗できない場合、賃貸人の債務は履行不能となるか。
規範
建物の賃貸借が、国税徴収法に基づく滞納処分による差押登記後になされた場合には、たとえ賃借人が建物の引渡しを受けていても、当該賃貸借は公売処分により建物の所有権を取得した者に対抗することができない。また、対抗できないことによって賃貸人の使用収益させる義務が履行不能となった場合、賃貸借関係は終了する。
重要事実
上告人は、その所有する建物につき税金滞納を理由として、昭和29年4月7日に東京都による差押登記がなされた。その後、上告人は被上告人との間で当該建物の賃貸借契約を締結し、建物を引き渡した。しかし、右差押に基づく公売処分により、昭和32年10月25日に訴外D社が建物の代金を完納して所有権を取得し、同年11月22日にその登記がなされた。これにより被上告人は建物を使用できなくなったため、上告人に対し敷金の返還を請求した。
事件番号: 昭和35(オ)959 / 裁判年月日: 昭和37年8月10日 / 結論: 棄却
一 国税徴収法(昭和34年法律第一四七号による改正前)第二三条ノ一による国の代金とは国税滞納処分の債権差押により国が被差押債権の取立権を取得し債権者の権利を行使しうるに至る法律関係をいう。 二 同法条に基づき被差押債権者に代位する国は、被差押債権に基づく債権者債務者間の訴訟に対し民訴第七一条による当事者参加ができる。
あてはめ
本件では、賃貸借契約の締結より前に、すでに滞納処分による差押登記が経由されている。そのため、被上告人が引渡しを受けていたとしても、公売処分により所有権を得たD社に対して賃借権を主張できず、建物を占有し続ける権原を失う。この結果、賃貸人である上告人が被上告人に建物を使用収益させる義務は、上告人の責に帰すべき事由により履行不能になったと評価される。
結論
差押登記後の賃借人は買受人に対抗できず、賃貸人の義務は履行不能となる。したがって、被上告人による敷金返還請求を認めた原判決の判断は正当である。
実務上の射程
抵当権設定登記と賃貸借の関係(民法395条等)と同様に、差押登記との先後関係が対抗力の成否を決する基準となる。答案上では、不動産執行や滞納処分が先行する場合、後続の賃借権が「後れを取る」帰結を確認し、賃貸借の終了に伴う敷金返還や損害賠償の論理構成に用いる。
事件番号: 昭和28(オ)1290 / 裁判年月日: 昭和30年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約に際して買主から売主に交付された保証金は、特段の事情のない限り、当該売買契約の存続期間中に限り寄託された消費寄託としての性質を有し、代金債務の履行を確保する趣旨を含むものと解するのが相当である。 第1 事案の概要:上告人(売主)と被上告人(買主)との間で反古紙の売買契約が締結された。その際…