判旨
民法714条に基づく監督義務者の損害賠償責任においては、責任無能力者本人の故意又は過失の有無を問わず、またその注意義務の存否を問題とする余地はない。
問題の所在(論点)
民法714条に基づく監督義務者の責任成立にあたり、責任無能力者本人の故意・過失(注意義務違反)の有無を要件とする必要があるか。また、責任無能力者の注意義務を問題とする余地があるか。
規範
民法714条の監督義務者の損害賠償義務は、責任無能力者が責任を負わない場合に、その監督義務者の監督懈怠を基礎として課される法定の責任である。したがって、責任無能力者本人の過失(注意義務違反)の有無は、監督義務者の責任成立に影響を及ぼさない。
重要事実
責任無能力者であるDが行った行為により、被上告人が損害を被った。上告人ら(Dの監督義務者)は、Dに注意義務があることを前提として、D自身の過失の有無が問題になると主張し、また自らが監督義務を怠らなかったと抗弁して争った。原審は上告人らの抗弁を排斥し、慰謝料15万円の支払義務を認めたため、上告人らが上告した。
あてはめ
民法714条による監督義務者の責任は、責任無能力者本人の責任を前提とするものではなく、監督者自身の監督義務懈怠という過失に基づく責任である。したがって、無能力者の「注意義務」の如きはもとより問題となる余地はない。原審が確定した事実関係に基づき、上告人らが監督義務を怠らなかった旨の抗弁を排斥した判断は正当である。
結論
監督義務者の損害賠償義務にあっては、無能力者の故意・過失を問わない。上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、714条の責任が709条の責任の代位ではなく、独自の監督義務違反を問うものであることを明確にした。答案上では、責任無能力者の客観的態様が不法行為の要件(違法性等)を満たすことを指摘すれば足り、本人の主観的過失を論じる必要がないことを示す際に活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)973 / 裁判年月日: 昭和34年7月31日 / 結論: 棄却
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