一 民法第七一五条所定の被用者とは、報酬の有無、期間の長短を問わず、広く使用者の選任に因り、その指揮監督の下に使用者の経営する事業に従事する者を指称するものであつて、父の命によつてその事業に従事する者もまた同条所定の被用者に外ならない。 二 民法第七一五条一項但書に規定する使用者の免責事由は、使用者にその主張立証の責任がある。
一 民法第七一五条所定の被用者の意義 二 同条所定の使用者の免責事由の立証責任
判旨
民法715条の被用者とは、報酬や期間を問わず、使用者の指揮監督の下にその事業に従事する者を指し、子が父の命により農業に従事する場合もこれに該当する。また、同条1項但書の免責事由については、使用者側が主張立証責任を負う。
問題の所在(論点)
1. 親子関係にある者が無報酬で家業を手伝っている場合、民法715条の「被用者」に該当するか。2. 使用者責任における免責事由の主張立証責任はどちらが負うか。
規範
1. 民法715条所定の被用者とは、報酬の有無や期間の長短を問わず、広く使用者の選任により、その指揮監督の下に使用者の経営する事業に従事する者をいう。2. 同条1項但書に規定する使用者の免責事由(選任・監督についての相当の注意)については、使用者側に主張立証責任がある。
重要事実
上告人A1は、父である上告人A2が経営する農業に従事していたが、その事業の執行につき事故を発生させた。被害者である被上告人は、A2に対しても使用者責任(民法715条)に基づく損害賠償を求めて提訴した。これに対しA2は、A1が被用者に当たらない旨の否認をしたが、免責事由(715条1項但書)については特段の主張を行っていなかった。
あてはめ
1. 被用者の該当性は実質的な指揮監督関係で決まるため、報酬の有無は問われない。本件ではA1が父A2の命によってその事業に従事していた事実が認められる以上、親子という親族関係があっても、実質的な指揮監督下にある「被用者」に該当するといえる。2. 免責事由は、不法行為の成立を阻止する抗弁としての性質を持つ。A2は被上告人の主張に対し単なる否認の答弁をしたに過ぎず、免責事由に係る具体的な事実を主張していないため、同条1項但書の適用を受けることはできない。
結論
A1はA2の被用者に該当し、またA2において免責事由の主張立証がなされていない以上、A2は使用者責任を免れない。したがって、A2の損害賠償義務を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
使用者責任における「使用関係」を広く解釈し、家庭内の手伝いであっても事業性が認められれば適用されることを示した基本判例である。答案上では、指揮監督関係の有無を実質的に判断する際の根拠として活用する。また、1項但書の免責事由が使用者側の抗弁事項であることを明示した点も実務上重要である。
事件番号: 昭和34(オ)213 / 裁判年月日: 昭和37年12月14日 / 結論: その他
一 元請負人が下請負人に対し工事上の指図をしもしくはその監督のもとに工事を施行させ、その関係が使用者と被用者との関係またはこれと同視しうる場合であつても、下請負人の被用者の不法行為が元請負人の事業の執行につきなされたものとするためには、直接間接に被用者に対し元請負人の指揮監督関係の及んでいる場合に加害行為がなされたもの…