利息制限法第二条により元本の支払に充当されたものとみなされた金員相当額を再度支払つた場合は、借主が同条の趣旨を知つていたものでない限り、その返還を請求する権利が生ずる。
利息制限法第二条により元本の支払に充当されたものとみなされた金員相当額を再度支払つた場合とその返還請求権の有無。
利息制限法2条,民法705条
判旨
利息制限法2条により元本に充当されたとみなされる天引利息分、および制限超過の損害金については、債務者がこれを含めて任意に支払った場合であっても、法律上の原因のない不当利得として返還を請求することができる。
問題の所在(論点)
利息の天引きが行われた場合において、利息制限法2条により元本充当がなされた後の残債務額を超えて支払われた金員について、不当利得返還請求が認められるか。また、制限超過の損害金の支払について利息制限法4条2項(当時)が返還請求を制限するか。
規範
1. 利息制限法2条に基づき、天引された利息のうち制限額を超える部分は元本の支払に充当されたものとみなされる。2. 制限超過により消滅した債務(元本および遅延損害金)を越えて支払われた金員は、特段の事情がない限り、法律上の原因なくして得た利益となり、民法703条に基づく不当利得返還請求の対象となる。3. 利息制限法4条2項等の任意支払規定は、実際の債務額を超えて支払われた損害金の返還請求を妨げるものではない。
重要事実
上告人(債権者)は、被上告人(債務者)に対し、額面115万円の貸付けの約諾をしたが、実際には25万円を期限内の利息として天引きし、90万円を交付した。その後、被上告人は約定元本115万円と遅延損害金を含む合計120万円を上告人に支払った。被上告人は、利息制限法の適用により算出される正当な債務額(約92万円)を超える支払分(約27万円)について、不当利得として返還を求めた。
あてはめ
1. 利息制限法2条の適用により、天引された25万円のうち制限超過分は元本に充当され、実際の元本額は交付額に法定の制限内利息を加算した額(約90.9万円)となる。2. 被上告人が支払った120万円のうち、上記元本および適法な遅延損害金の合算額(約92.4万円)を超える部分は、存在しない債務の支払である。3. この超過分は、元本充当の結果として返還義務がなくなった金額の支払、および義務なくして支払われた損害金である。したがって、上告人は法律上の原因なくこの利益を得ており、不当利得返還義務を負う。
結論
被上告人の請求は認められる。利息制限法の制限を超える支払分は法律上の原因を欠く不当利得であり、上告人は超過額27万5402円86銭を返還しなければならない。
実務上の射程
利息制限法下での元本充当および超過支払の返還請求に関する基本判例である。答案上では、利息制限法による引き直し計算の結果生じた超過支払分について、民法703条の要件を検討する際の法的根拠として用いる。任意支払規定(同法1条2項、4条2項等)が「債務が存在しない超過分」の返還を妨げないことを示す際にも重要となる。
事件番号: 昭和35(オ)1370 / 裁判年月日: 昭和40年2月9日 / 結論: 棄却
一 債務者が利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息損害金を任意に支払つたときは、右制限をこえる部分は、当然に残存元本に充当されるものと解すべきである。 二 (意見がある)。
事件番号: 平成25(受)78 / 裁判年月日: 平成26年7月29日 / 結論: 破棄差戻
元利均等分割返済方式によって返済する旨の約定で金銭消費貸借契約が締結された場合において,借主から約定の毎月の返済額を超過する額の支払がされたときには,当該超過額を将来発生する債務に充当する旨の当事者間の合意があるなど特段の事情のない限り,当該超過額は,その支払時点での残債務に充当され,将来発生する債務に充当されることは…