債務者が利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息・損害金を任意に支払つたとき、右制限をこえる金員は、当然残存元本に充当されるものと解すべきではない。
任意に支払われた法定の制限超過の利息・損害金は残存元本に充当されるか。
利息制限法1条1項,利息制限法1条2項,利息制限法4条1項,利息制限法4条2項,利息制限法2条
判旨
利息制限法所定の制限を超える利息または損害金を債務者が任意に支払った場合、その超過部分は無効であるが、返還請求ができないばかりか、残存元本への充当も認められない。
問題の所在(論点)
利息制限法所定の制限を超える利息・損害金を任意に支払った場合、同法1条2項・4条2項の規定に照らし、当該超過部分を当然に残存元本に充当することは認められるか。
規範
金銭消費貸借における利息または損害金の契約のうち、利息制限法1条1項・4条1項の制限を超える部分は無効である。しかし、債務者が当該超過部分を任意に支払ったときは、同法1条2項・4条2項によりその返還を請求できないだけでなく、結果として返還を受けたのと同一の経済的利益を生じさせる残存元本への充当も許されない。
重要事実
債務者Eは、上告人(債権者)との間の消費貸借契約に基づき、利息制限法の制限を超える損害金を任意に支払った。その後、被上告人(Eの相続人等)が、当該超過支払分は元本に当然充当されるべきであり、その結果、残存元本は消滅し過払いが生じていると主張して争った。
あてはめ
利息制限法1条2項および4条2項は、任意に支払われた超過部分について返還請求を禁止しており、これは債権者に当該利得の保有を許容する趣旨と解される。元本への充当を認めれば、実質的に返還を受けたのと同様の利益を債務者に与えることになり、同条項の趣旨に反する。また、同法2条が利息天引の場合に元本充当を規定しているのは、金銭授受のない名目上の元本を調整する特則であり、現実に金銭が授受された本件のような場合に類推適用することはできない。さらに、元本が残存する場合のみ充当を認めると、元本が残存しない債務者との間で著しい不均衡が生じるため、一律に充当を否定すべきである。
結論
制限超過の損害金を任意に支払った以上、当該超過支払分を残存元本へ充当することは許されない。
実務上の射程
本判決はその後、昭和39年11月18日の大法廷判決によって変更され、「元本が存在する限り、超過分は元本に充当される」とする法理が確立した。したがって、現在の実務・司法試験答案においては、本判決の結論ではなく、変更後の充当認容説(昭和39年判決)に従って論証を行う必要がある。本判決は、歴史的経緯および反対意見における「社会立法としての趣旨」等の議論を確認する資料として機能する。
事件番号: 昭和35(オ)1370 / 裁判年月日: 昭和40年2月9日 / 結論: 棄却
一 債務者が利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息損害金を任意に支払つたときは、右制限をこえる部分は、当然に残存元本に充当されるものと解すべきである。 二 (意見がある)。
事件番号: 昭和35(オ)115 / 裁判年月日: 昭和37年11月1日 / 結論: 棄却
利息制限法第二条により元本の支払に充当されたものとみなされた金員相当額を再度支払つた場合は、借主が同条の趣旨を知つていたものでない限り、その返還を請求する権利が生ずる。