判旨
債務引受けの事実が認められ、その引受け後に債務者が債務の一部を支払った場合には、特段の事情がない限り、消滅時効の更新事由としての「承認」に該当する。
問題の所在(論点)
債務引受けがあった後、引受人が債務の一部を支払った事実をもって、民法上の「承認」として時効更新(中断)の効力を認めることができるか。
規範
債務の引受けがなされた場合、その後に引受人が債務の一部を弁済したときは、当該債務の存在を観念的に認識していることを外部に表示したものといえ、民法152条(旧147条3号)の「承認」に該当する。この場合、時効は更新され、新たにその進行を開始する。
重要事実
上告人(被告)は、昭和3年2月ないし3月頃、訴外D株式会社が被上告人(原告)に対して負担していた債務を引受けた。その後、上告人は当該引受けに係る債務の一部を支払ったが、後に時効による債務の消滅を主張した。
あてはめ
上告人がD株式会社の債務を適法に引受けた事実に加え、その引受後に自ら債務の一部を支払った事実が原審において認定されている。一部弁済は債務の存在を前提とする行為であり、債権者に対して債務の存在を認める旨の表示をしたものと評価できる。したがって、上告人による一部弁済は債務の「承認」にあたり、時効中断の効力が生じる。
結論
上告人による一部弁済は時効の承認に該当するため、時効中断の効果が認められ、上告人の時効主張は認められない。
実務上の射程
債務引受人が一部弁済を行った場合に、承認としての効力を認めた事例である。実務上は、引受人が主たる債務者としての地位を承継した以上、その言動は通常の債務者と同様に「承認」の主体となり得ることを確認する際に引用される。
事件番号: 昭和31(オ)775 / 裁判年月日: 昭和32年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代理権を有する者が代理人として債務を承認した場合には、本人の意思にかかわらず、消滅時効の中断(更新)の効果が本人に帰属する。 第1 事案の概要:上告会社を代理する権限を有するDが、その代理権に基づいて本件債務の承認を行った。これに対し、上告人はDによる承認の効果が会社に及ぶことを否定して上告したが…