債務の一部弁済のために振り出された小切手が支払人により支払われた場合、右支払は振出人による承認として右債務の消滅時効中断の効力を有する。
債務の一部弁済のために小切手が振り出された場合右小切手の支払は右債務の消滅時効中断の事由たる承認となるか。
民法147条3号,小切手法第4章(28条以下)
判旨
債務の一部弁済のために小切手を交付した場合、支払銀行による小切手金の支払いは振出人の行為に基づく債務の弁済にあたり、その支払時に「承認」による消滅時効中断の効力が生じる。
問題の所在(論点)
債務の弁済として小切手を交付した場合において、「承認」による時効中断の効力が発生する時期は、小切手の「交付時」か、それとも銀行による「支払時」か。
規範
「承認」(民法152条1項、旧民法147条3号)とは、時効の利益を受ける者が、時効によって権利を失う者に対してその権利の存在を認める旨を表示する行為である。債務の一部弁済は債務の存在を認識していることを表白する行為であるから「承認」に該当する。また、小切手は振出人が支払人に対し一定金額の支払いを委託する有価証券であるため、支払人(銀行)による支払いは振出人の委託行為に基づくものと評価される。
重要事実
上告人は被上告人に対し残代金債務を負っていた。上告人は当該債務の一部弁済のために小切手を振り出し、被上告人に交付した。その後、昭和27年10月3日に、被上告人が支払銀行に小切手を呈示し、銀行がその支払いを行った。上告人は、時効中断の効力が発生するのは小切手を「交付」した時であり、その後の銀行の支払行為は債務者の意思行動とは無関係であるため「承認」にはあたらないと主張して、消滅時効の成立を争った。
あてはめ
本件小切手の振出交付は、債務そのものの弁済に代えてなされたものではなく、一部弁済の「方法」として、取引銀行をして支払いをなさしめるためになされたものである。この場合、支払銀行が所持人(被上告人)の呈示を受けて支払いをしたことは、振出人(上告人)の委託行為に基づく行為であり、上告人自身の行為による債務の弁済が行われたのと同視できる。一部弁済は債務の承認を包含するため、銀行が支払いを行った昭和27年10月3日において、上告人による債務の承認があったといえる。
結論
小切手の支払いによる債務の弁済がなされた時に時効中断の効力を生じる。したがって、支払日の翌日から新たに時効期間が進行するとした原判決は正当である。
実務上の射程
本判決は、小切手交付による弁済がなされた場合の時効中断時期を明確にしたものである。答案作成上は、単なる「意思の通知」ではなく、銀行を通じた「行為」が債務者の帰責する範囲内にあることを論拠として、支払時まで中断の効力が持続(あるいはその時点で発生)することを論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)976 / 裁判年月日: 昭和37年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務の支払のために約束手形が交付された場合、特段の事情がない限り、それは「支払に代えて」ではなく「支払のために」なされたものと解され、原因債務は消滅しない。 第1 事案の概要:上告人は、破産会社に対する取引代金債務の支払を目的として、第三者(F)振出の約束手形を交付した。上告人は、これにより代金債…