債務者乙の債権者甲に対する債務を、丙が肩替りして履行を引き受けた場合に、第三者のためにする契約がなされたものとするためには、乙丙間で、特に甲をして直接丙に対し履行の請求権を取得させることを約したことを要し、債務引受がなされたものとするためには、甲丙間にその旨の契約が成立することを要すると解すべきである。
債務引受または第三者のためにする履行引受契約の要件
判旨
第三者のためにする契約としての債務引受が成立するには、債務者と引受人間の契約において債権者に直接の請求権を取得させる合意が必要であり、債権者と引受人間の債務引受には両者間の契約を要する。
問題の所在(論点)
債務者と引受人の間でなされた債務の「肩代わり」の合意が、債権者に対する直接の効力を持つ「第三者のためにする契約」としての債務引受、あるいは債権者との間の債務引受として認められるか。
規範
第三者のためにする契約(民法537条)が成立するためには、債務者と引受人の間の契約において、特に債権者に対して直接の履行請求権を取得させることを約する必要がある。また、債権者と引受人の間で債務引受が成立するためには、両者間において直接その旨の契約が締結されることを要する。
重要事実
被上告人と訴外D社との間で、D社が上告銀行に対して負う債務を被上告人が肩代わりして履行を引き受ける契約がなされた。しかし、この契約は、D社の製紙操業に必要な砕木機を有利に確保することを条件とするものであった。その後、上告銀行は被上告人に対し、当該債務の履行を求めて提訴した。
あてはめ
まず、被上告人とD社の合意は、砕木機の確保を条件としたものであり、その条件は成就していないため、単純な債務引受の合意とは認められない。次に、被上告人とD社の契約において、上告銀行に対し直接の請求権を取得させる旨の特段の約定が存在したとは認められないため、第三者のためにする契約には当たらない。さらに、被上告人と上告銀行との間で、直接債務を引き受ける旨の契約が締結されたという事実も認められない。
結論
被上告人は上告銀行に対して本件債務を負担しておらず、上告銀行による請求は認められない。
実務上の射程
履行引受と債務引受の区別、および第三者のためにする契約の成立要件(受益の合意)を論じる際の基礎となる判例である。債務者・引受人間の内部的な「肩代わり」の約束だけでは、直ちに債権者が直接の権利を取得するわけではないことを示す実務上の指針となる。
事件番号: 昭和35(オ)110 / 裁判年月日: 昭和35年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務引受けの事実が認められ、その引受け後に債務者が債務の一部を支払った場合には、特段の事情がない限り、消滅時効の更新事由としての「承認」に該当する。 第1 事案の概要:上告人(被告)は、昭和3年2月ないし3月頃、訴外D株式会社が被上告人(原告)に対して負担していた債務を引受けた。その後、上告人は当…