判旨
不法行為に基づく損害賠償債務の引受け及びその連帯保証は、原因となる行為が犯罪を構成する場合であっても、引受け・保証行為自体が不法性を帯びるものでない限り、公序良俗に反せず有効である。
問題の所在(論点)
犯罪を構成するような不法行為に基づく損害賠償債務を、第三者が引受け、または連帯保証する行為は、民法90条の公序良俗に反して無効となるか。
規範
不法行為による損害賠償債務を対象とする債務引受及び連帯保証契約において、原因債務の発生原因たる行為が犯罪等の不法な性質を有していたとしても、当該引受けや保証を行う行為自体に不法性が認められない限り、公序良俗(民法90条)に反して無効となることはない。
重要事実
訴外Dは、被上告人(債権者)に対し職務義務違反(不法行為)に基づく損害賠償債務を負っていた。上告人A1はこのDの債務を引受け、上告人A2がこれを連帯保証した。Dの行為は犯罪を構成する不法なものであったため、上告人らは当該引受け及び保証行為の有効性を争った。
あてはめ
本件において、訴外Dの行為が犯罪を構成する不法なものであることは事実であるが、その損害を賠償すべき債務を上告人A1が引受け、A2が連帯保証した行為それ自体は、不法性を帯びるものとは認められない。損害賠償債務の履行を確保する行為は、犯罪行為そのものを助長・肯定するものではなく、むしろ被害回復を図る正当な法的手段である。したがって、原因債務の不法性は引受け等の契約の効力を否定する理由にはならない。
結論
不法行為債務の引受け及び連帯保証は有効であり、上告人らは支払義務を免れない。
実務上の射程
犯罪行為に起因する債務の支払約定が「犯罪の対価」や「不当な口止め」を目的とする場合は公序良俗違反となり得るが、本判決は、単なる損害賠償債務の事後的な引受けや保証であれば、原因債務が不法でも契約自体は原則として有効であることを示した。実務上は、示談における保証人確保の有効性を裏付ける根拠となる。
事件番号: 昭和39(オ)618 / 裁判年月日: 昭和40年1月28日 / 結論: 棄却
鉱業所鉱員が他から金銭を借り受けその支払をしないまま同鉱業所を退職し遠隔地に転居するに際し、同鉱業所労務係員が右不払の事実を知りながら、右鉱員の依頼によりその家財道具を人目につかぬように出発後荷造りして送つてやつたため、前記金銭債権の取立てが不能になつたとしても、右退職転居が同鉱員の自発的意思に出たものであり、右労務係…
事件番号: 昭和37(オ)1032 / 裁判年月日: 昭和38年10月8日 / 結論: 棄却
手形の裏書交付があつたからといつて、原因関係たる貸金債務の保証若しくは連帯保証契約を締結する意思を表示したものと解することはできない。
事件番号: 昭和37(オ)680 / 裁判年月日: 昭和39年11月13日 / 結論: 棄却
使用者たる会社が月賦販売の仲介業者との間に包括的契約を締結し、かつ、従業員の物品購入代金等の債務について連帯保証契約を締結することは、使用者たる会社の事業の範囲に属する。