使用者たる会社が月賦販売の仲介業者との間に包括的契約を締結し、かつ、従業員の物品購入代金等の債務について連帯保証契約を締結することは、使用者たる会社の事業の範囲に属する。
従業員の福利厚生に関する行為と会社の事業の範囲。
民法715条
判旨
会社の従業員の福利厚生に関する行為は、原則として使用者たる会社の事業執行の範囲に属し、従業員の物品購入代金債務について会社が連帯保証契約を締結することも、事業の範囲内に含まれる。
問題の所在(論点)
従業員の私的な物品購入代金債務について会社が連帯保証する行為が、民法715条1項にいう「事業の執行について」なされたものといえるか。また、相手方が契約の成立について調査しなかったことに過失があるといえるか。
規範
一般に会社がその従業員の福利厚生に関する行為をすることは、使用者たる会社の事業執行の範囲に属する。したがって、従業員の生活必需品等の購入につき、会社が月賦販売仲介業者との間で包括的契約を締結し、かつ従業員の物品購入代金等債務について連帯保証契約を締結することは、客観的にみて「事業の執行について」(民法715条1項)なされたものと解するのが相当である。
重要事実
月賦販売仲介業者である被上告人は、職域団体(上告人会社)との間で、従業員が加盟店で物品を購入した際の代金償還に関し、会社が徴収・支払を代行する旨の約定を含む包括契約を締結した。その際、上告人の従業員Dは、契約書等を偽造して会員名簿を提出するなどの詐欺行為を行い、被上告人に損害を与えた。本件契約の締結場所は会社の宿直室であり、交付時の一部が白地であったが、被上告人は特段の調査を行わなかった。
事件番号: 昭和37(オ)1032 / 裁判年月日: 昭和38年10月8日 / 結論: 棄却
手形の裏書交付があつたからといつて、原因関係たる貸金債務の保証若しくは連帯保証契約を締結する意思を表示したものと解することはできない。
あてはめ
まず、従業員の福利厚生は会社の事業と密接な関連を有するため、その一環としてなされる物品購入代金の連帯保証は、客観的に会社の事業の範囲に属すると評価できる。次に、契約締結の場所が宿直室であったことや、書類に一部白地があったとしても、それらの事実のみをもって直ちに調査義務を認めることはできず、社会通念に照らしても被上告人に重大な過失があったとは認められない。したがって、従業員Dの詐欺行為は事業の執行につきなされたものといえる。
結論
上告人会社は、従業員Dの詐欺行為について、使用者責任に基づき損害賠償義務を負う。被上告人に過失はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は「事業執行性」の判断において外形標準説を前提としつつ、福利厚生という名目があれば、本来私的な債務の保証であっても事業関連性を広く認める傾向を示す。答案上は、職務権限外の行為であっても、客観的に会社の事業に関連する外形を備えていれば、特段の事情(相手方の悪意・重過失)がない限り事業執行性を肯定するロジックとして活用できる。
事件番号: 昭和37(オ)1159 / 裁判年月日: 昭和38年3月28日 / 結論: 棄却
本件保証が手形債務の保証であることの主張がある以上、本件保証には商行為性があり連帯保証となると判断したからといつて、当事者の主張しない事項を認定判断したことにはならない。
事件番号: 昭和34(オ)894 / 裁判年月日: 昭和37年1月16日 / 結論: 棄却
青森県B協同組合連合会が県下各市町村E協同組合に対して発した貸付要領に関する通達に反してなされた連帯保障契約は無効でない。