請求書は、一般に請求したいという事実については強い証明力をもつと認められるが、そこに記載されている売買、賃貸借の存否については通常強い証明力をもつとは認められない。
請求書の証明力。
民訴法185条
判旨
請求書は請求した事実については強い証明力を有するが、そこに記載された売買や貸借の存否については作成者の一方的な主張にすぎず、通常強い実質的証明力は認められない。
問題の所在(論点)
文書の成立(形式的証明力)が認められる場合において、請求書に記載された売買・貸借等の事実の存否について、どの程度の「実質的証明力」が認められるべきか。
規範
文書の成立に争いがない場合であっても、直ちに実質的証明力が認められるわけではない。特に請求書等の文書において、記載内容の真実性(実質的証明力)は、その作成目的や性質に照らして個別に判断されるべきである。
重要事実
上告人は、被上告人に対し、売買貸借等の債務の存在を証明するために請求書(甲一号証)を証拠として提出した。被上告人側は当該請求書の成立自体については争わなかったが、その内容である債務の存否については否認した。原審は、当該請求書には記載内容(債務の存否)を裏付ける実質的証明力がないとして上告人の請求を退けた。
あてはめ
請求書は、債権者が債務者に対して支払いを求めたという「請求の事実」については強い証明力を有する。しかし、その内容である売買や貸借の存否については、作成者が自己の主張を一方的に記載した書面にすぎない。したがって、客観的な裏付けがない限り、請求書の存在のみをもって直ちに原因関係(債務の発生)を肯定できるほどの強い実質的証明力をもつとは認められない。
結論
請求書の記載内容(債務の存否)について実質的証明力を否定した原審の判断は正当であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
司法試験においては、書証の証拠力を論じる際の「実質的証明力」の判断手法として活用できる。特に、報告的文書や作成者の一方的意図が介入しやすい文書について、形式的証明力が認められても実質的証明力の判断は別次元であるという法理を説明する際に、本判決の論理(作成者の意図の性質に着目する手法)が参考になる。
事件番号: 昭和37(オ)1213 / 裁判年月日: 昭和38年3月14日 / 結論: 棄却
(少数意見)「金額百万円振出人東京中央区E株式会社代表取締役Dなる小切手の支払に関し、一切の責任をB1、B2連名の上保証申上げます。B1(印)B2(印)」なる証書を差し入れた事実を認め、その書証としての成立を認めた以上は、特段の事情のない限り、右記載に反する認定判断をすべきでないのに、原判決は右特段の事情の存在について…