判旨
賃料支払催告後に賃借人が反対債権をもって相殺の意思表示をした場合、債権の一部が消滅しても、催告時に示された債権の残額について催告の効力は妨げられない。
問題の所在(論点)
賃料支払の催告がなされた後に、賃借人が反対債権をもって相殺を援用した場合、その催告および解除の効力は維持されるか。
規範
債権者が債務履行の催告をした後、債務者が反対債権による相殺の意思表示を行った場合、相殺によって消滅した額を除いた残債務の範囲において、当該催告の効力は維持される。
重要事実
賃貸人(被上告人)は賃借人(上告人)に対し、延滞賃料の支払を求めて催告を行った。賃借人はこの催告を受けた後になって、土地の残土整理費用(15,400円)の償還請求権を自働債権とし、催告にかかる賃料債権を受働債権として相殺する旨の意思表示をした。賃貸人は賃借権の解除を主張した。
あてはめ
賃借人が残土整理費用をもって相殺の意思表示をしたのは、賃貸人による催告の後であった。この相殺により、催告の対象となった賃料債権の一部は消滅する。しかし、相殺の効果が生じたとしても、消滅しなかった残余の債権額については依然として履行遅滞の状態にある。したがって、催告時に示された債権のうち、相殺後の残額の限度で催告は有効に存続すると解される。
結論
相殺後の債権残額について催告の効力は有効であり、これに基づく解除も認められる。
実務上の射程
催告後の相殺によって全額が消滅しない限り、解除の要件としての催告の効力は否定されない。実務上、催告後に相殺がなされた場合でも、残額について履行がない限り、解除の効力を争うことは困難であることを示している。
事件番号: 昭和30(オ)530 / 裁判年月日: 昭和32年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が賃貸人に対して有する費用償還請求権等の債権を自働債権とする相殺の意思表示が、賃貸人による賃貸借契約解除の意思表示の後になされた場合、その相殺によって契約解除の効力は妨げられない。 第1 事案の概要:賃借人(上告人)は、本件家屋の修繕費として6,280円を支出したが、賃料の支払を怠った。賃貸…