商品売買の継続的取引において、各月取引分がその翌月に決済される取り決めであり、この取り決めが殆んど例外なく実行されていたときには、各月の取引高に対する代金の支払に一部未済があれば、その未済部分は独立に消滅時効にかかるものと解すべきである。
継続してなした商品売買の代金の未済部分が消滅時効にかかるとされた事例。
民法166条,民法173条1号
判旨
小売商人が株式会社に対して商品を売り渡した代金債権であっても、その消滅時効期間については、商法522条の商事時効ではなく、民法173条1号(旧法)が定める2年の短期消滅時効が適用される。
問題の所在(論点)
小売商人が株式会社(商人)に対して有する商品の売買代金債権について、商法522条の商事時効(5年)と、民法173条1号(旧法)の短期消滅時効(2年)のいずれが適用されるか。
規範
商人が商品を売却したことによって生じた代価の債権は、相手方が商人(株式会社等)であるか否かにかかわらず、その性質上、民法173条1号(旧法)に定める「小売商人・・・が売却した産物又は商品の代価」の債権に該当し、2年の短期消滅時効に服する。これは、商法の商事時効(5年)に対する民法の特別規定として優先して適用されるものと解される。
重要事実
上告人(小売商人)は、被上告人(株式会社)に対し、継続的な取引に基づき商品を売却していた。本件取引では、各月の取引高を翌月に決済する約定がなされ、概ね例外なく実行されていたが、一部の代金支払について未済が生じた。上告人は、当該代金債権について商事時効(5年)の適用を主張したが、原審は民法173条1号(旧法)の2年の短期消滅時効を適用し、時効の完成を認めたため、上告人が上告した。
あてはめ
本件における上告人は小売商人であり、その代金債権は「小売商人が売却した商品の代価」という民法173条1号の文言に直接該当する。この点、取引の相手方が株式会社であるとしても、債権の発生原因が小売商人による商品の売却である以上、その法的性質は変わらない。本件のような月次の決済慣行がある場合、未決済部分は独立して時効にかかる。したがって、履行期から2年を経過した債権については、商事時効の成立を待たずとも、民法上の短期消滅時効が完成しているといえる。
結論
小売商人の商品の代価債権については、相手方が株式会社であっても民法173条1号(旧法)の適用があるため、2年の短期消滅時効にかかる。
実務上の射程
2017年の民法改正により、民法173条等の短期消滅時効規定は廃止され、債権の消滅時効は「知った時から5年・行使できる時から10年」(新民法166条1項)に統一された。これに伴い商事時効規定(旧商法522条)も削除されたため、現在は本判決が対象とした期間の差異は生じないが、旧法下の事案や、特定の職種に基づく短期時効の趣旨を理解する上での歴史的意義を有する。
事件番号: 昭和36(オ)503 / 裁判年月日: 昭和37年5月10日 / 結論: 棄却
油糧砂糖配給公団の有する油糧売却代金債権は、民法第一七三条の短期消滅時効にかからない。