油糧砂糖配給公団の有する油糧売却代金債権は、民法第一七三条の短期消滅時効にかからない。
油糧砂糖配給公団の売掛代金債権と民法第一七三条の適用
民法173条
判旨
油糧砂糖配給公団が有する物品売渡代金債権は、旧民法173条1号の短期消滅時効の対象にはならず、また、株式会社が負う債務は商行為によって生じたものとして、その遅延損害金の法定利率には商事法定利率が適用される。
問題の所在(論点)
1. 配給公団の物品売渡代金債権に、旧民法173条1号の短期消滅時効(2年)が適用されるか。2. 株式会社である上告人の債務について、商事法定利率(年6分)が適用されるか。
規範
1. 旧民法173条1号(2年)にいう「卸売商人又は小売商人」の債権とは、営利を目的とする私的な商人の債権を指し、公的な配給公団による物品売渡債権はこれに含まれない。2. 株式会社がその事業に関して負担する債務は、特段の事情がない限り商行為(商法503条等)によって生じたものと解され、その法定利率は商法514条の定める商事法定利率(年6分)が適用される。
重要事実
油糧砂糖配給公団が、株式会社である上告人に対し、油糧を売り渡した。公団は上告人に対し、当該油糧の売却代金の支払を求めたが、上告人は当該債権が民法173条1号所定の2年の短期時効に罹っていると主張して争った。また、当該債務に係る遅延利息の利率についても、商事法定利率の適用の可否が争点となった。
あてはめ
1. 油糧砂糖配給公団の性格に鑑みれば、同公団は一般の「卸売商人又は小売商人」には該当しない。したがって、その債権は同法条所定の短期時効の対象にはならないと解される。2. 上告人は商人たる株式会社であることから、本件油糧の買入れに伴う債務は特段の事情がない限り商行為によって生じた債務といえる。よって、商法514条の適用により、遅延利息の法定利率は年6分となる。
結論
本件債権に短期消滅時効は適用されず、また、遅延損害金の法定利率については商事法定利率(年6分)が適用される。
実務上の射程
消滅時効に関する判断は、民法改正(2020年施行)により短期消滅時効の規定が廃止されたため、現在の実務上の意義は乏しい。一方、商事法定利率(商法514条)に関する判断は、改正後の民法404条(変動制・年3%等)および商法514条の削除により、現在は改正後の民法が一本化して適用される点に注意が必要である。商人の行為の商行為性という基本的な解釈手法を確認する素材として用いる。
事件番号: 昭和35(オ)842 / 裁判年月日: 昭和36年5月30日 / 結論: 棄却
民法第一七三条第一号は、卸売商人が、消費者に対し売却した商品の代金債権についてのみならず、転売を目的とする者に対し売却した商品の代金債権についても適用がある。