漁業協同組合は、民法第一七三条第一号にいう生産者または卸売商人にあたらない。
漁業協同組合は民法第一七三条第一号にいう生産者または卸売商人にあたるか
民法173条,水産業協同組合法4条,水産業協同組合法5条,水産業協同組合法17条
判旨
水産業協同組合法に基づき設立された組合は、非営利を目的とする団体であるため、民法173条1号(旧法)にいう「生産者」または「卸売商人」には該当しない。
問題の所在(論点)
水産業協同組合法に基づき設立された組合が、組合員の漁獲物を販売して生じた売掛代金債権について、旧民法173条1号(現行法の施行により削除)にいう「生産者」または「卸売商人」の売主としての短期消滅時効が適用されるか。
規範
民法173条1号(旧法)に規定される短期消滅時効の対象となる「生産者」または「卸売商人」とは、営利を目的として活動する者を指す。同条項の趣旨が、頻繁かつ簡易に決済されるべき営利取引の速やかな解決にあるからである。したがって、非営利目的で組合員の直接奉仕を目的とする法人はこれに該当せず、また、組合員と組合は別人格である以上、組合員が生産者であっても組合を当然に同条の主体と解することはできない。
重要事実
被上告人である水産業協同組合は、その組合員が漁獲した魚類を販売した。これに伴い発生した売掛代金債権について、上告人が旧民法173条1号の2年の短期消滅時効の適用(または準用)を主張し、債権の消滅を争った。第一審および控訴審は、組合が「生産者」や「卸売商人」に当たらないとして上告人の主張を退けたため、上告に至った。
あてはめ
水産業協同組合法4条によれば、同法に基づく組合は、事業を通じて組合員に直接の奉仕をすることを目的としており、営利を目的とするものではない。たとえ事業の一環として魚類を販売したとしても、その非営利的な法的性格は変わらないため、営利を前提とする「生産者」等には当たらない。また、組合員が生産者であっても、組合とは法律上別個の人格者である以上、組合を生産者に準ずるものとして扱う根拠もない。よって、本件売掛債権に同条の適用はない。
結論
水産業協同組合は民法173条1号(旧法)の「生産者」または「卸売商人」に該当しない。したがって、本件売掛代金債権に同条の短期消滅時効は適用されない。
実務上の射程
本判決は旧民法の短期消滅時効に関するものであるが、非営利団体(協同組合等)が行う取引の法的性質が「営利性」を要件とする規定(商法の適用等)に合致するかを検討する際の解釈指針となる。現在は債権法改正により消滅時効期間が原則統一されたが、特別法上の営利性の判断においては依然として参照価値がある。
事件番号: 昭和36(オ)503 / 裁判年月日: 昭和37年5月10日 / 結論: 棄却
油糧砂糖配給公団の有する油糧売却代金債権は、民法第一七三条の短期消滅時効にかからない。