民法一七三条一号は、いわゆる第一次産業ないし原始産業に属しない生産者の産物の代価についても適用がある。
いわゆる第一次産業ないし原始産業に属しない生産者の産物の代価と民法一七三条一号の適用
民法173条1号
判旨
製造業者が商人に製品を売却した場合の売買代金債権には、旧民法173条1号(現172条等)の2年の短期消滅時効が適用される。当該製造が原始産業に属さない限り、買主が商行為として買い受けた場合であっても同条の適用は妨げられない。
問題の所在(論点)
製造業者が製造した製品を商人に売却した場合の代金債権について、旧民法173条1号(2年の短期消滅時効)が適用されるか。特に、製品の製造が原始産業に属さない場合や、買主側が商行為として買い受けた場合における同条の適否が問題となる。
規範
製造業者がその製造した商品を売却した際の代金債権は、旧民法173条1号にいう「産物」または「商品」の売価に係る債権に該当する。また、同条の適用については、買主が商行為として当該商品を買い受けた場合であっても、特段の除外規定がない限り、商事時効(旧商法522条)に優先して適用される。
重要事実
上告人(製造業者)は、自ら製造したゴルフ用手袋を、被上告人(会社)に対して売却した。被上告人はこの手袋を商行為として買い受けたが、代金を支払わなかった。上告人が代金の支払いを求めて提訴したところ、被上告人は旧民法173条1号に基づく2年の短期消滅時効を援用して争った。
あてはめ
本件ゴルフ用手袋の製造は、いわゆる第一次産業ないし原始産業に属するものではないが、旧民法173条1号の対象となる商品の販売に該当する。また、被上告人会社が商行為としてこれを買い受けていたとしても、同条の適用を否定する理由にはならない。したがって、当該代金債権は2年の経過によって消滅時効が完成したと評価される。
結論
本件ゴルフ用手袋の売買代金債権には旧民法173条1号が適用され、消滅時効が完成している。したがって、上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
本判決は、民法改正(2020年4月施行)前の短期消滅時効に関するものであるが、製造業者による販売についても「商品の売価」に含まれることを明示した点に意義がある。現在の民法166条1項下では、権利を行使できることを知った時から5年(または10年)に統一されたため、本判決の直接の射程は旧法下の事案に限定される。
事件番号: 昭和35(オ)842 / 裁判年月日: 昭和36年5月30日 / 結論: 棄却
民法第一七三条第一号は、卸売商人が、消費者に対し売却した商品の代金債権についてのみならず、転売を目的とする者に対し売却した商品の代金債権についても適用がある。