判旨
登記の抹消請求訴訟は現在の登記名義人を被告とすべきであり、名義人でない国に対する訴えは不適法である。また、所有権移転後で登記未経由の間に登記簿上の名義人を所有者としてなされた農地買収処分は当然無効とはいえない。
問題の所在(論点)
1. 登記名義人でない国に対し、登記の抹消を請求する訴えの適法性(被告適格)。 2. 真実の所有者ではなく登記簿上の名義人を対象になされた農地買収処分の有効性。
規範
1. 登記の抹消請求における被告適格:登記の抹消請求訴訟においては、現在の登記名義人を被告としなければならない。 2. 農地買収処分の効力:農地法上の買収処分において、実体上の所有権移転後であっても、登記未経由の間に登記簿上の所有名義人を所有者としてなされた処分は、当然に無効となるものではない。
重要事実
上告人は、農地の所有権を取得したが、その移転登記を未了のままにしていた。その後、国が登記簿上の所有名義人を対象として当該農地の買収処分を行った。これに対し、上告人は国を被告として、当該買収処分の無効を前提とした登記抹消等を求めて提訴した。
あてはめ
1. 登記抹消請求は、登記記録上の権利を抹消することを目的とする性質上、その権利者として記載されている者(登記名義人)を相手方とする必要がある。本件において国は登記名義人ではないため、被告適格を欠き、訴えは不適法である。 2. 農地買収処分は、行政上の画一的な処理を要するため、登記簿上の表示を信頼してなされた以上、実体上の権利関係と異なっていたとしても直ちに当然無効とは解されない(大法廷判決の法理を援用)。
結論
1. 登記名義人でない国に対する登記抹消請求の訴えは、不適法として却下される。 2. 登記名義人を対象とした農地買収処分は有効であり、上告人の主張は認められない。
実務上の射程
物権的請求権に基づく登記抹消請求における被告選択の基本原則を示すものである。答案上では、被告適格の検討において「登記名義人であること」を要件として挙げる際の根拠として活用できる。また、農地買収等の行政処分と公信力の欠缺する登記の関係についても、処分の安定性を重視する判例法理として位置づけられる。
事件番号: 昭和27(オ)865 / 裁判年月日: 昭和32年5月30日 / 結論: 棄却
不動産の所有権者でない者が所有権保存登記手続をして登記簿上所有名義人となつたときは、真正の所有権者は、右名義人に対し移転登記手続を求めることができる。
事件番号: 昭和34(オ)726 / 裁判年月日: 昭和37年9月14日 / 結論: 破棄差戻
丙を代理人として、甲の先代から不動産を買い受けた乙が、丙にその所有権を移転する意思がないにも拘らず、たまたま右の売買契約書に買主名義が丙となつていた関係上、丙をして甲に対する所有権移転登記手続請求の訴を提起させ、その勝訴の確定判決に基づいて甲より丙に所有権移転登記を受けさせた場合には、民法第九四条第二項の法意に照し、乙…