一 訴を不適法として却下する判決に対する上訴において、上訴審が原判決を是認する場合には、上訴棄却の判決をなすべきものである。 二 農地買収、売渡処分の無効を前提とする土地所有権確認並びに登記抹消請求訴訟においては、県知事は被告適格を有しない。 三 農地の譲渡後、所有権移転登記の未経由の間に、譲渡人をその所有者として買収処分がなされた場合において、譲受人が売渡手続にいて売渡の相手方となりこれを原因として所有権移転登記を経由したときは、譲渡人と譲受人との間の任意譲渡を原因とする所有権移転登記は未経由であつても、右譲渡人は、もはや、買収、売渡処分の無効確認を求める法律上の利益を有しない。
一 訴を不適法として却下する判決に対する上訴において上訴審が原判決を是認する場合になすべき判決。 二 農地買収、売渡処分の無効を前提とする土地所有権確認並びに登記抹消請求訴訟における県知事の被告適格。 三 農地の譲渡後、所有権移転登記の未経由の間に、譲渡人をその所有者として買収、売渡処分がなされた場合において、右譲渡人が買収、売渡処分の無効確認を求める法律上の利益を有しないとされた事例。
民訴法384条,民訴法396条,民訴法225条,行政事件訴訟特例法3条
判旨
行政処分の無効確認を求める訴えにおいて、当該処分に基づき第三者が既に不動産の登記名義を取得している場合には、原則として処分の無効確認を求める訴えの利益を欠く。
問題の所在(論点)
行政処分(買収・売渡処分)に基づき、既に第三者が登記名義を取得している場合、当該処分の無効確認を求める訴えの利益が認められるか。
規範
行政処分の無効確認を求める訴えにおける「訴えの利益」は、当該処分によって生じた法的状態を是正し、原告の権利利益を回復するために必要かつ適切な手段である場合に認められる。しかし、処分に基づき既に第三者が登記名義を取得し、権利関係が私法上の紛争へと移行している場合、行政処分の効力を争うよりも、現在の登記名義人に対する直接の権利主張(所有権確認訴訟等)を行う方が紛争解決に直接的であり、処分の無効確認を求める訴えの利益は否定される。
事件番号: 昭和36(オ)572 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
実体にそわない所有権移転登記は、その抹消登記手続がなされていなくても、第三者は右登記を受けた者の所有権取得を否認し得る。
重要事実
大阪府知事による本件土地の買収処分および売渡処分が行われ、その結果、譲受人であるFが既に本件土地の登記名義を取得していた。上告人ら(譲渡人の承継人)は、当該買収・売渡処分が当然に無効であると主張し、大阪府知事を被告として、処分の無効確認および登記嘱託の無効確認、土地所有権の確認等を求めて提訴した。
あてはめ
本件において、上告人らが争っている買収・売渡処分に基づき、既に第三者であるFが有効に登記名義を取得している。このような状況下では、公法上の処分自体の無効を確認しても、直ちに上告人らの所有権が回復するわけではなく、紛争の実質はFとの間における私法上の所有権の帰属に集約されている。したがって、譲渡人の承継人である上告人らが、被告(知事)に対して処分の無効確認を求めることは、現在の法的地位の不安定を解消するために有効適切な手段とはいえず、訴えの利益を欠くものと解される。
結論
第三者が既に登記名義を取得している場合、譲渡人の承継人において買収・売渡処分の無効確認を求める訴えの利益はない。
実務上の射程
行政事件訴訟法36条の「予防的無効確認訴訟」における「補充性」の議論に通じる。処分によって形成された外観を前提に私法上の物権変動が完了している場合、処分取消しや無効確認ではなく、直接の民事訴訟(所有権に基づく登記抹消等)を優先すべきとするのが判例の確立した態度である。
事件番号: 昭和32(オ)934 / 裁判年月日: 昭和35年3月31日 / 結論: 破棄自判
登記簿上不動産の所有名義人となつている国税滞納者に対する滞納処分として右不動産を公売処分に付した国が、登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有する第三者にあたらないとされる場合には、公売処分は、目的不動産の所有権を競落人に取得させる効果を生じないとする意味において、無効と解すべきである。
事件番号: 昭和34(オ)333 / 裁判年月日: 昭和36年9月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲渡において、後買主が登記を具備した場合、特段の事情がない限り、売主の前買主に対する登記移転義務は履行不能となる。また、中間省略登記がなされた場合であっても、それが実体上の権利関係に合致するものである限り、その有効性を否定することはできず、民法177条の対抗関係が維持される。 第1 事…