登記簿上不動産の所有名義人となつている国税滞納者に対する滞納処分として右不動産を公売処分に付した国が、登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有する第三者にあたらないとされる場合には、公売処分は、目的不動産の所有権を競落人に取得させる効果を生じないとする意味において、無効と解すべきである。
登記簿上不動産の所有名義人となつている国税滞納者に対する滞納処分として右不動産を公売処分に付した国が、登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有する第三者にあたらないとされた場合と公売処分の効力。
民法177条,旧国税徴収法(明治30年法律21号)10条,旧国税徴収法(明治30年法律21号)24条,行政事件訴訟特例法1条
判旨
不当な税処分により登記名義を失った者が、公売処分により不動産を取得した第三者に対し、背信的悪意者の法理に準じて、登記なくして所有権を対抗できる場合があることを示した。
問題の所在(論点)
民法177条の「第三者」の範囲。実質的無効な公売処分によって登記を得た者が、登記を欠く真の所有者に対して、その所有権を否定することが許されるか。
規範
不動産競売や公売等の手続において、実質的な所有者が不当な処分によって名義を失っていることを知りつつ、これを奇貨として利益を得る目的で権利を取得した者は、自由競争の範囲を逸脱した背信的悪意者に該当し、実質的所有者は登記なくして所有権を対抗できる。
重要事実
対象土地はもともと上告人が所有していたが、滞納処分として公売に付され、被上告人がこれを買い受けた。しかし、その公売処分の前提となる滞納事実は存在せず、上告人は公売の無効を主張。被上告人は、上告人が所有者であることを承知しながら、あえて公売手続に参加して名義を取得し、上告人に対して土地の明け渡しを求めた。
事件番号: 昭和34(オ)1280 / 裁判年月日: 昭和36年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲渡において、第一の譲受人は、自らが未だ所有権移転登記を備えていない以上、第二の譲受人に対して所有権の取得を対抗することができない。これは、第二の譲受人の有する登記が有効であるか否かを問わない。 第1 事案の概要:上告人は、本件不動産を譲り受けたと主張しているが、未だその所有権取得の登…
あてはめ
被上告人は、上告人が土地を適法に取得した所有者であることを認識していた。それにもかかわらず、公売処分という形式的瑕疵を利用して利益を得るべく行動しており、このような態様で権利を主張することは、信義則上許されない背信的悪意者に相当する。したがって、被上告人は民法177条にいう正当な利益を有する第三者にはあたらない。
結論
上告人は、登記がなくとも被上告人に対して土地の所有権を対抗することができる。したがって、被上告人の請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
登記の公信力がない日本法において、登記名義の欠缺を奇貨とする悪質な第三者を排除する「背信的悪意者」の法理を、公売や税務処分が絡む事案にも適用したものとして重要である。実務上は、主観的態様(害意の有無)の立証が鍵となる。
事件番号: 昭和32(オ)1135 / 裁判年月日: 昭和36年2月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地の所有権を有しない者は、当該土地に対する買収・売渡処分の無効確認を求める法律上の利益を有さず、また、所有権に基づかない登記抹消請求も認められない。 第1 事案の概要:上告人(原告)の先代は、本件土地を被上告人(被告)の先代に対し生前贈与していた。その後、自作農創設特別措置法に基づき、本件土地に…
事件番号: 昭和30(オ)705 / 裁判年月日: 昭和34年9月3日 / 結論: 棄却
国税徴収法第一四条の規定は滞納差押財産につき第三者の財産取戻請求手続を規定したものであつて、収税官吏が差押処分又は公売処分をなすに際し公簿の記載を離れて真実の所有者を探究すべき義務あることを規定したものではない。
事件番号: 昭和33(オ)720 / 裁判年月日: 昭和35年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】相続による不動産の取得も、対抗問題(民法177条)となり得るが、相手方がその権利取得の事実を争わない場合には、登記の欠缺を理由に権利取得を否定することはできない。 第1 事案の概要:被上告人らは、共同相続を原因として本件山林の共有権を取得した。これに対し上告人は、被上告人らが共有権を取得した事実自…
事件番号: 昭和34(オ)333 / 裁判年月日: 昭和36年9月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲渡において、後買主が登記を具備した場合、特段の事情がない限り、売主の前買主に対する登記移転義務は履行不能となる。また、中間省略登記がなされた場合であっても、それが実体上の権利関係に合致するものである限り、その有効性を否定することはできず、民法177条の対抗関係が維持される。 第1 事…