判旨
事実認定及び証拠の取捨選択は事実審裁判所の専権に属し、その結果として当事者が経済的不利益を被ったとしても、直ちに裁判の公正を害するものとはいえない。法律審においては、原判決の認定経路に不当な意図や法解釈の誤りがない限り、事実関係の判断を維持すべきである。
問題の所在(論点)
事実審における証拠の取捨選択および事実認定の妥当性が、法律審である最高裁判所の審判対象となるか。また、判決によって生じる当事者間の経済的不均衡が、裁判の公正を害し違憲となるか。
規範
事実の認定、証拠の取捨選択は、事実審裁判所の専権に属する事項であり、法律審(最高裁判所)がこれに関与することはできない。また、判決の結果として一方の当事者が経済的に不利な立場に陥ったとしても、そのこと自体は法律判断の適否や憲法違反の有無を左右するものではない。
重要事実
上告人は、本件建物の増改築に約75万円を投じ、その時価が100万円を超えていると主張した。これに対し、被上告人はわずか約15万円の競落代金を支払っただけで、建物全体の所有権を取得し、さらに上告人に対して多額の損害金支払を命ずる判決を得た。上告人は、この結果が著しく公平を害し、原審の事実認定や法解釈に誤りがあるとして上告した。
あてはめ
原判決の挙示した証拠に照らせば、その事実認定の過程は首肯できるものであり、上告人に不利益を与える意図があったとは認められない。また、認定された事実に基づくなされた法律判断も正当である。上告人が主張する「経済的な不利」は、裁判所の法解釈や事実認定を左右する法的根拠とはならず、原判決に公平公正を害する点は認められない。
結論
本件上告を棄却する。原判決の事実認定および法律判断に誤りはなく、違憲の主張も前提を欠く。
実務上の射程
事実認定の専権に関する原則を再確認した判例である。実務上、判決結果が「不公平」であるといった感情的な主張や経済的損失の強調のみでは、上告審での事案逆転は不可能であることを示している。司法試験においては、事実認定が事実審の専権であることを前提としつつ、経験則・論理則違反がない限り法律審が介入できないことの説明として参照される。
事件番号: 昭和32(オ)1026 / 裁判年月日: 昭和35年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審による事実認定や証拠の取捨選択が適法に行われている限り、独自の見解に基づく事実認定の非難は上告理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)における事実認定に、証拠無視、審理不尽、および経験則・採証法則違反があるとして、理由不備または理由齟齬の違法を主張し上告した。しかし、具体…