判旨
債務不履行に基づく損害賠償請求において、不可抗力を理由とする免責を主張するためには、単なる外部的事情のみならず、それが債務者の義務履行を不可能とする性質を有することを要する。また、転売による損害額の算定についても、原審において具体的な主張がなされていない場合には、これを上告審で争うことはできない。
問題の所在(論点)
債務不履行に基づく損害賠償において、不可抗力による免責および転売事実に基づく損害額の算定を、事実審で主張することなく上告審で新たに主張できるか、また、単なる事情の存在をもって直ちに不可抗力による免責が認められるか。
規範
債務者の義務不履行が不可抗力によるものとして免責されるためには、発生した事象が債務者の支配を越えたものであることに加え、当該事象によって義務の履行が客観的に不可能となったといえる特段の事情が必要である。また、損害賠償の算定根拠となる具体的な転売事実等は、弁論主義の原則に基づき、事実審において適切に主張・立証されなければならない。
重要事実
上告人(債務者)は、被上告人に対し、さんま粕の引渡義務を負っていたが、これを履行しなかった。上告人は、この不履行が不可抗力によるものであると主張し、また、損害額の算定に関して転売の事実を考慮すべきであると争った。しかし、これらの事実は第一審および原審(控訴審)では主張されていなかった。
あてはめ
まず、不可抗力の主張については、上告人が原審において主張していない事項であり、かつ、示された諸事情を考慮しても本件さんま粕引渡義務の不履行が不可抗力によるものとは直ちに認められない。次に、損害額の算定に関しても、上告人は転売の事実を原審において何ら主張していないため、これを前提とした損害額の算定に関する主張は、上告審の段階では採用し得ない。
結論
本件引渡義務の不履行が不可抗力によるものとはいえず、また転売事実を考慮した損害額の算定も認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
不可抗力の主張が認められる閾値が極めて高いことを示すとともに、民事訴訟法上の適時提出主義および弁論主義の観点から、損害算定の基礎となる具体的事実を事実審で主張し尽くすことの重要性を確認する射程を有する。
事件番号: 昭和32(オ)225 / 裁判年月日: 昭和34年11月26日 / 結論: その他
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