判旨
無権代理人が行った行為について、本人が追認した場合は、その行為の法律効果は本人に帰属し、消費貸借等の契約において貸主の地位が追認によって発生することも妨げられない。
問題の所在(論点)
無権代理人による貸付けおよび準消費貸借契約の締結について、本人が追認することによって、本人が貸主としての地位を承継し、その効力が本人に帰属するか。
規範
代理人が本人のためにすることを示す顕名(民法99条1項)は、黙示の形で行われることも許容される。また、無権代理行為であっても、本人がこれを追認したときは、別段の意思表示がない限り、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる(同法113条、116条)。消費貸借または準消費貸借における債権者(貸主)としての地位についても、追認の対象となり得る。
重要事実
妻Eは、夫である被上告人のためにすることの黙示の表示をした上で、上告人の母Fに対し合計34万円を貸し付けた。その後、EはFとの間で、従前の7口の貸金を一口にまとめ、利息年1割、弁済期を定めた準消費貸借契約を締結した。しかし、これら一連の行為においてEは代理権を有していなかった(無権代理)。その後、夫である被上告人が、Eの行った準消費貸借契約を追認したため、被上告人が貸主として債務の履行を求めた。
あてはめ
本件において、Eの行為には「被上告人のためにすること」の黙示の表示が認められるため、顕名に欠けるところはない。また、無権代理人によって行われた準消費貸借契約について、被上告人が事後に追認した事実が認められる。消費貸借における貸主の地位が追認に親しまないとする特段の理由はなく、追認によって準消費貸借契約の効力が本人(被上告人)に有効に帰属することとなる。
結論
被上告人による追認は有効であり、準消費貸借契約に基づく貸金債権は本人に帰属するため、上告人は債務を免れない。
実務上の射程
顕名が「黙示」でも足りること、および無権代理行為の追認対象が契約上の地位(貸主等)であっても広く認められることを示す。答案上では、顕名の有無が争点となる場面や、無権代理の追認の効果を論じる際の基礎的な根拠として活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)577 / 裁判年月日: 昭和36年9月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本人自ら契約を締結したとの主張に対し、裁判所が代理人によって締結されたと認定することは、処分権主義に反せず、弁論主義の範囲内として許容される。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が、上告人(被告)との間で金銭消費貸借契約が成立したと主張し、その残額の支払を求めて提訴した。これに対し、裁判所は、当該…