判旨
本人自ら契約を締結したとの主張に対し、裁判所が代理人によって締結されたと認定することは、処分権主義に反せず、弁論主義の範囲内として許容される。
問題の所在(論点)
原告が「本人間で契約が成立した」と主張している場合に、裁判所が「代理人を通じて契約が成立した」と認定することが、処分権主義(民事訴訟法246条)または弁論主義に反するか。
規範
当事者が特定の契約が自己と相手方との間で成立したと主張してその履行を求める訴えを提起した場合、裁判所が当該契約を当事者の代理人と相手方との間で締結されたものと認定しても、当事者の申し立てていない事項について判断したものとはいえず、処分権主義(民事訴訟法246条)に抵触しない。
重要事実
被上告人(原告)が、上告人(被告)との間で金銭消費貸借契約が成立したと主張し、その残額の支払を求めて提訴した。これに対し、裁判所は、当該契約は上告人本人ではなく、上告人の代理人Dと被上告人との間で成立したものであると認定した。上告人は、この認定が当事者の申し立てていない事項についての判断であり、違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件では、被上告人と上告人との間の金銭消費貸借成立という法律関係の存否が審判の対象となっている。契約の締結が本人によるものか代理人によるものかは、契約成立という主要事実を導くための具体的な態様にすぎない。記録上、一審において代理権授与の有無に関する証拠が提出され、代理権の授与が肯定されていることから、裁判所が提出された証拠に基づき代理人による締結を認定することは、当事者の合理的な意思に反するものではなく、審判対象の範囲内にあるといえる。
結論
裁判所が代理人による契約締結を認定しても、処分権主義違反や釈明権不行使、審理不尽の違法はない。
実務上の射程
契約成立の主張において、本人締結と代理人締結は、訴訟物たる権利(契約に基づく請求権)を基礎づける事実関係として同質のものと扱われる。答案上は、主要事実の認定において、当事者の主張と多少の齟齬があっても、法律関係の本質において共通性がある限り、弁論主義・処分権主義に反しない根拠として本判例を引用できる。
事件番号: 昭和37(オ)160 / 裁判年月日: 昭和38年4月12日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】債権者の代理人と称する者に対する弁済がなされた場合、当該主張には表見代理のみならず、債権の準占有者に対する弁済(民法478条)の主張が含まれ得るとし、その判断を尽くすべきとした。 第1 事案の概要:上告人は、債権者の代理人と称する訴外Dに対して弁済を行ったと主張し、仮定抗弁を提出した。原審は、この…