判旨
賃貸借契約において「三箇月前の予告で契約を解除することができる」との解約権留保特約がある場合、特約に基づく解約にあたり「相当の理由」(正当事由)を具備する必要はない。
問題の所在(論点)
建物の賃貸借契約において、予告期間を定めた解約権留保特約に基づき解約を申し入れる際、賃貸借の継続を困難とする「相当の理由(正当事由)」が必要とされるか。
規範
賃貸借契約において当事者双方が一定の予告期間をもって解約できる旨を合意している場合、その特約に基づく解約申入れは、契約上の合意に従い有効に成立する。かかる特約に基づく解約権の行使については、特段の事情がない限り、借地借家法(当時であれば旧借家法)上の正当事由やその他相当の理由の具備を要するものではない。
重要事実
賃貸人(被上告人)と賃借人(上告人)は、建物の賃貸借契約において「貸主又は借主の都合で三箇月前の予告で本契約を解除することができる」との第3条項(解約権留保特約)を設けていた。賃貸人は、本件訴状の送達(昭和29年7月6日)により当該条項に基づく解約の意思表示を行い、明渡しを求めた。これに対し、賃借人は、契約期間満了直前には当該解約権を行使できないことや、解約には相当の理由が必要であること等を主張して争った。
あてはめ
本件契約第3条には「貸主又は借主の都合で」解約できる旨が明記されており、その文言上、解約権の行使を制限する付加的な要件は存在しない。賃借人が主張する「契約期間満了の三箇月以内の時期には行使できない」という解釈や「解約につき相当の理由の具備を要する」という解釈には、契約解釈上の根拠が認められない。したがって、訴状送達による解約意思表示から3ヶ月が経過した時点(遅くとも昭和30年9月末日)で、特約通りの効力が発生し、本件契約は終了したと評価される。
結論
解約権留保特約に基づく解約に相当の理由は不要であり、予告期間の経過により賃貸借契約は終了する。
事件番号: 昭和34(オ)1113 / 裁判年月日: 昭和36年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約における既払代金没収の特約が、契約当事者の窮迫に乗じて締結されたなどの事情がない限り、公序良俗に反し無効であるとはいえない。 第1 事案の概要:上告人Aは、本件地上の建物を収去しなければならない不利な立場にあった。Aは、土地賃貸人である訴外Dとの間で土地売買契約を締結する際、契約が解除され…
実務上の射程
本判決は旧借家法下のものであるが、現代の借地借家法体系においては、賃貸人からの解約申入れには同法28条の正当事由が原則として必要となる点に注意が必要である。ただし、本判決の論理は、契約自由の原則に基づき、特約の文言を尊重する姿勢を示すものである。実務上、定期借家契約でない普通借家契約において賃貸人から解約する場合には、本判決にかかわらず、強行法規としての正当事由具備が必要となる可能性が高い点に留意して答案を構成すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)963 / 裁判年月日: 昭和37年3月29日 / 結論: 棄却
適法な転貸借がある場合、賃貸人が賃料延滞を理由として賃貸借契約を解除するには、賃借人に対して催告すれば足り、転借人に対して右延滞賃料の支払の機会を与えなければならないものではない。
事件番号: 昭和35(オ)53 / 裁判年月日: 昭和37年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法1条3項の権利濫用について、契約解除権の行使が権利の濫用にあたると解すべき根拠となる事実が認められない場合には、当該解除は有効である。原審が確定した事実関係の範囲内では、解除権の行使を不当とする事情がなく、権利濫用には当たらないとした判断を維持した。 第1 事案の概要:本件は契約の解除権行使の…
事件番号: 昭和32(オ)164 / 裁判年月日: 昭和35年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が、一時使用目的の借地契約における解約特約に基づき、土地所有者に代位して不法占有者に対し建物の収去及び土地の明渡を請求することは適法である。 第1 事案の概要:土地所有者Dに対し、建物所有目的の賃借権を有する債権者(被上告人)が、債務者Dに代位して、土地の一部を占有する占有者(上告人)に対し…
事件番号: 昭和32(オ)569 / 裁判年月日: 昭和34年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法(現行の借地借家法25条相当)にいう「建物所有を目的とする賃貸借」に該当しないか、あるいは「一時使用のための借地権」と認められる場合には、存続期間に関する法定の制限を受けず、約定期間の満了により賃貸借が終了する。 第1 事案の概要:本件賃貸借契約において、当事者は約定の期間満了による契約終了…