判旨
国税徴収法に基づく公売において、見積価格及び公売価格が当時の実勢価格より多少低廉であっても、諸般の事情に照らし不当に低廉であると認められない限り、当該処分は適法である。
問題の所在(論点)
国税徴収法(旧法等)に基づく公売処分において、見積価格及び公売価格が実勢価格を下回る場合、それが直ちに違法な処分となるか、あるいは「不当に低廉」か否かの判断基準が問題となる。
規範
行政庁が公売における見積価格を決定するに際しては、鑑定人の鑑定結果のみならず、当事者間の争いのない事実や諸証拠を総合して合理的に判断すべきである。その価格が当時の実勢価格と比較して多少低廉であったとしても、決定に至る経路や諸状況に鑑み、それが「不当に低廉」であると認められない限り、裁量権の逸脱・濫用や上告人の権利を不当に無視したものとはいえず、適法と解される。
重要事実
収税官吏が、本件建物の公売に際し見積価格を定め、13万円で公売を実施した。これに対し上告人は、鑑定人Dの鑑定結果等を根拠に、当該価格が不当に低廉であり違法であると主張した。原審によれば、公売当時における本件建物の実勢価格は少なくとも16.7万円であったと認定されている。
あてはめ
本件建物の実勢価格が約16.7万円であったのに対し、公売価格は13万円であり、確かに「多少低廉な憾」はあるといえる。しかし、裁判所は鑑定結果のみに依拠せず、競落に至るまでの経路やその他の諸証拠を総合して判断している。実勢価格との差額が著しく大きいとはいえず、公売プロセスの正当性を否定するほどの不合理性は認められない。したがって、本件見積価格の設定及び公売の実施は、不当に低廉な価格で行われたものとは認められない。
結論
本件公売処分は適法であり、見積価格の決定過程に違法はない。上告人の権利を不当に無視したものとは認められないため、上告を棄却する。
事件番号: 昭和41(オ)846 / 裁判年月日: 昭和43年4月19日 / 結論: 棄却
判決理由参照。 参照(昭和三五年(オ)第五四号、同年一〇月七日第二小法廷判決、民集一四巻一二号二四二〇頁登載源泉徴収所得税並びに加算税決定取消請求事件)
実務上の射程
行政庁の専門的判断に基づく価格設定(見積価格)について、実勢価格との乖離のみをもって直ちに違法とするのではなく、「不当に低廉」か否かという裁量的判断の枠組みを示したものである。答案上は、裁量権の限界(事実誤認や著しい不合理性)を論じる際の参照判例として活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)491 / 裁判年月日: 昭和34年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法行為または債務不履行に基づく損害賠償の算定において、公定価格制度が存在する場合、公定価格を超える部分は特別の事情による損害としての要件を欠く限り、賠償の対象とはならない。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、本件醤油油の取引に関連して損害を被ったとして、相手方に対し損害賠償を請求した。その際、…
事件番号: 昭和33(オ)738 / 裁判年月日: 昭和35年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】国税徴収法上の公売処分において、見積価額を記載した封書を公売場所に置くべき手続規定に違反があったとしても、その違法は公売処分を当然に無効とする程度の瑕疵とはいえない。 第1 事案の概要:税務署長が行った建物の公売処分において、見積価額が69万9000円と査定されていた。しかし、当時の施行規則23条…