判旨
判決文が極めて簡潔であり、原審(東京高裁昭和32年4月11日判決)の判断を相当として上告を棄却したものである。原審は、債務不履行による契約解除に伴う原状回復義務において、金銭返還義務を負う者が、その受領の時から利息を付して返還すべきとした。
問題の所在(論点)
契約解除に伴う原状回復として金銭を返還する場合、利息を付すべき期間の始期はいつか。特に、民法545条2項の適用範囲と性質が問題となる。
規範
民法545条2項(現行法も同様)の規定によれば、契約が解除された場合において、返還すべきものが金銭であるときは、その受領の時から利息を付さなければならない。これは不当利得の特則としての性格を有し、返還義務者の善意・悪意を問わず、受領時からの利息付加を義務付けるものである。
重要事実
上告人(被告・売主)と被上告人(原告・買主)との間で締結された不動産等の売買契約につき、買主側から債務不履行を理由とした契約解除がなされた事案。原審は、売主に対し、既に受領した売買代金の返還に加え、その受領の日からの利息(年5分)の支払いを命じた。これに対し上告人が、利息付加の始期等を争い上告したものである。
あてはめ
最高裁判所は、原審が認定した事実関係に基づき、受領時からの利息付加を認めた判断は相当であるとした。特段の反対事情がない限り、同条項の文言通り「受領の時」を起点として利息が発生すると解される。本件においても、契約解除による原状回復義務の内容として、受領済みの代金に対する受領時以降の利息を付すべきとした原審の論理を追認した。
結論
契約が解除された場合、金銭の返還義務者は、その受領の時から利息を付して返還しなければならない。したがって、受領時を始期とする利息の支払いを命じた原判決は正当である。
実務上の射程
事件番号: 昭和35(オ)850 / 裁判年月日: 昭和36年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物賃貸借の更新拒絶に必要な「正当な事由」の有無は、賃貸人および賃借人双方の利害得失を比較考量して判断すべきである。賃貸人が賃料受領を明確に拒絶しているなどの事情がある場合、更新拒絶を認めるに足りる正当事由があるとは認められない。 第1 事案の概要:賃貸人(上告人)が、賃借人(被上告人)に対し、建…
本判決自体は極めて短文であるが、解除に伴う原状回復義務における利息付加義務(民法545条2項)の解釈を確定させた実務上重要な先例である。答案上は、解除の効果として原状回復を論じる際、金銭返還に当然に利息が伴う根拠として同条項を引用する際に用いる。
事件番号: 昭和34(オ)920 / 裁判年月日: 昭和35年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解除後に生じた不当利得ないし損害賠償としての賃料相当額の算定において、当事者間に争いのない約定賃料額を基準とすることは適法であり、上告審で初めて主張された統制額等の考慮を欠いたとしても違法ではない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)との間の土地賃貸借契約が解除さ…
事件番号: 昭和36(オ)43 / 裁判年月日: 昭和36年7月6日 / 結論: 棄却
土地所有者が仮設建築物を所有して土地を不法占有する者を相手方として土地明渡の調停を申立てたところ、その建物の居住者が利害関係人として期日に出頭し、なお居住者が多数あることが判明したので、事態の解決を計るため、調停外において右居住者中の有力者一名と期間を一〇年とする土地賃貸借契約を結び、一〇年後には必ず返地することを確約…
事件番号: 昭和30(オ)846 / 裁判年月日: 昭和33年2月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務が存在しないことを知りながら任意に弁済を行った場合、民法705条の非債弁済に該当し、不当利得返還請求権は否定される。公定賃料を超過する賃料の支払いであっても、支払義務がないことを認識していれば同条が適用される。 第1 事案の概要:賃借人(上告人)は、賃貸人との間において約定の賃料を支払う旨の契…
事件番号: 昭和36(オ)304 / 裁判年月日: 昭和36年9月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物買取請求権は、買取請求の意思表示の時点において、土地賃借権が有効に存在していることを要件とする。 第1 事案の概要:上告人A1及びA2が、被上告人所有の土地を賃借し、その地上に建物を所有していた事案において、賃料の支払をめぐる争い等により賃貸借関係の…