判旨
憲法32条は裁判所において裁判を受ける権利を保障するが、審級制度の具体的内容は立法政策に委ねられており、保全処分に関する判決に対し通常の上告を認めない規定は合憲である。
問題の所在(論点)
仮差押や仮処分等の保全処分に関する判決に対し、通常の上告を制限する規定は、憲法32条が保障する「裁判を受ける権利」を侵害し、違憲といえるか。
規範
憲法32条は、何人も裁判所において裁判を受ける権利を有することを規定したものである。これに対し、裁判所の組織、権限、審級等の具体的内容は、憲法81条(違憲審査権)等に別段の定めがある場合を除き、諸般の事情を考慮して決定すべき法律上の立法政策の問題である。
重要事実
上告人は、仮差押または仮処分に関する判決に対して通常の上告を認めない旨の旧民事訴訟法の規定(旧393条3項、409条の2等)について、裁判を受ける権利を保障した憲法32条に違反すると主張して上告を提起した。
あてはめ
憲法32条は裁判を受ける権利を保障するが、特定の審級構造を憲法上直接的に要求するものではない。本件で問題となった旧民訴法の規定は、保全処分の迅速性等の性質に鑑み、上告の範囲を合理的に制限した立法政策の範疇に属するものと解される。したがって、通常の上告をなし得ないものとした規定は、憲法の趣旨に反する不合理な制限とはいえない。
結論
仮差押または仮処分に関する判決に対して通常の上告を認めない規定は、憲法32条に違反しない。
実務上の射程
司法審査の対象となる「裁判」の保障内容(審級制度の立法裁量)に関するリーディングケースである。憲法上の論点(裁判を受ける権利の限界)だけでなく、民事訴訟法における不服申立ての制限の合理性を基礎づける際に引用される。
事件番号: 昭和35(テ)13 / 裁判年月日: 昭和36年11月17日 / 結論: 棄却
仮差押又は仮処分に関する判決に対し通常の上告を許さない旨定めた民訴法の規定は、憲法第三二条に違反しない。
事件番号: 昭和36(テ)25 / 裁判年月日: 昭和36年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条は裁判を受ける権利を規定するが、裁判所の組織、権限、審級等の具体的制度は法律による立法政策の問題である。したがって、仮差押や仮処分に関する判決について通常の上告を認めない民事訴訟法の規定は同条に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、仮差押または仮処分に関してなされた判決に対し、通常の…
事件番号: 昭和33(ク)158 / 裁判年月日: 昭和33年8月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条は審級制度をいかに定めるかについて規定したものではなく、憲法81条が定める場合を除き、審級制度の設計は立法府の裁量に委ねられている。したがって、下級裁判所の決定に対する最高裁判所への抗告を制限する規定は、同条に違反しない。 第1 事案の概要:抗告人は、下級裁判所が下した決定に対して最高裁…