判旨
憲法32条は審級制度をいかに定めるかについて規定したものではなく、憲法81条が定める場合を除き、審級制度の設計は立法府の裁量に委ねられている。したがって、下級裁判所の決定に対する最高裁判所への抗告を制限する規定は、同条に違反しない。
問題の所在(論点)
下級裁判所の決定に対する最高裁判所への抗告を制限する民事訴訟法の規定が、憲法32条に違反し違憲とならないか。すなわち、憲法32条が特定の審級制度を保障しているかが問題となる。
規範
憲法32条の保障する裁判を受ける権利は、審級制度の具体的内容までも規定したものではない。憲法81条の規定する場合を除き、審級制度に関しては立法の裁量に委ねられており、最高裁判所への抗告権をどのように認めるかは立法府が適宜定めうる事項である。
重要事実
抗告人は、下級裁判所が下した決定に対して最高裁判所への抗告を申し立てた。その際、当時の民事訴訟法419条の2(現在の特別抗告等に関する制限規定に相当)が、最高裁判所への抗告を制限していることは、裁判を受ける権利を保障した憲法32条に違反すると主張した。
あてはめ
憲法32条は、何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪われないことを保障しているが、それは必ずしも複数回の審理や上訴の機会を憲法上保障するものではない。審級制度は本来、司法政策の問題として立法府が決定すべき事項である。本件において、民事訴訟法が決定に対する抗告を制限していても、それは立法府に与えられた裁量の範囲内における審級制度の設計といえる。したがって、当該制限が憲法32条を侵害しているとは認められない。
結論
民事訴訟法による抗告の制限は憲法32条に違反しない。よって、本件抗告は棄却されるべきである。
実務上の射程
事件番号: 昭和31(ク)86 / 裁判年月日: 昭和31年5月4日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】高等裁判所の決定に対する最高裁判所への抗告(特別抗告)は、憲法違反を理由とする場合に限られ、単なる法令違憲を主張する実質が法律判断の是非にある場合は不適法である。また、このような審級制度の制約は、憲法81条の場合を除き立法府の裁量に委ねられており、憲法32条に違反しない。 第1 事案の概要:抗告人…
憲法32条と審級制度の関係に関するリーディングケースである。答案上は、三審制が憲法上の要請か否か(原則として否定)を論じる際や、上訴制限規定の合憲性を検討する際の規範として活用できる。ただし、刑事事件における控訴権の制限等については別途慎重な検討を要することに留意する。
事件番号: 昭和33(ク)6 / 裁判年月日: 昭和33年5月6日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許された場合に限られ、民事事件においては憲法違反を実質的な理由とする特別抗告(旧民訴法419条の2)のみがこれに該当する。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定(執行停止の決定)に対して、その決定が憲法に違反する旨を主張して最高裁判所に抗告を申…
事件番号: 昭和33(ク)118 / 裁判年月日: 昭和33年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】審級制度の構成は憲法81条が定める違憲審査権の行使を除き、立法府の広範な裁量に委ねられている。したがって、特別抗告の受理に際して原裁判所が憲法違反の主張の有無のみを判断する仕組みも、裁判を受ける権利を定めた憲法32条に違反しない。 第1 事案の概要:抗告人は、原裁判所が民事訴訟法(旧法)に基づき、…
事件番号: 昭和37(ク)169 / 裁判年月日: 昭和37年6月28日 / 結論: 棄却
高等裁判所の決定について違憲を理由とする場合以外に抗告の途がないことは、憲法に違反しない。(昭和二四年(ク)第一五号、同年七月二二日大法廷決定参照)
事件番号: 昭和39(ク)118 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
第一審及び原審は、要するに、抗告人らの本件(仮処分執行停止命令)申立は申立の利益がないとして、却下あるいは棄却の裁判をしたものであって、裁判そのものを拒否したものではなく、憲法第三二条に違反したものとはいえないこと、当裁判所の判例(昭和二七年(オ)一一五〇号同二八年一二月二三日大法廷判決・民集七巻一三号一五六一頁)の趣…