判旨
賃料延滞を理由とする賃貸借契約の解除において、催告の方法や期間が一定の程度にとどまるものであれば、特段の事情がない限り、解除権の行使が権利の濫用にあたることはない。
問題の所在(論点)
賃料延滞に基づく賃貸借契約の解除に際し、催告の方法や期間がどの程度の不当性を持てば、解除権の行使が権利の濫用として否定されるか。
規範
賃料支払の催告に基づく解除権の行使が、直ちに信義則違反や権利の濫用(民法1条2項、3項)となるわけではない。催告の方法および期間が社会通念上不当と認められる特段の事情がない限り、適法な解除権の行使として認められる。
重要事実
賃貸人(被上告人)が、賃借人(上告人等)の賃料延滞に基づき、支払の催告をした上で本件賃貸借契約を解除した。これに対し賃借人側は、催告の方法や期間が不当であり、解除権の行使は権利の濫用にあたると主張して争った。第一審および原審は、当該催告が不当であるとはいえず、権利の濫用にもあたらないとして解除を有効と認めたため、賃借人側が上告した。
あてはめ
本件における延滞賃料の催告は、その方法および期間に照らして、法律上不当なものとはいえない。また、契約解除権の行使が権利の濫用となるような特段の事情も認められない。したがって、適法な催告に基づく解除は有効であり、賃貸人の請求を認めた原審の判断は正当である。
結論
本件催告に基づく解除は有効であり、解除権の行使が権利の濫用となることはないため、上告を棄却する。
実務上の射程
賃料不払による解除において、債務者側が「催告期間が短い」「催告方法が不適切」として権利濫用の抗弁を提出する際の判断枠組みとなる。実務上は、多少の期間の短さや方法の不備があっても、不信行為の存在や賃料不払の事実があれば、容易には権利濫用とは認められないことを示唆している。
事件番号: 昭和36(オ)1430 / 裁判年月日: 昭和38年10月15日 / 結論: 棄却
僧侶個人が住居兼説教所所有のために賃借使用して来た土地を本拠として宗教法人たる寺院が設立され、前示建物が同法人の所有に移された場合であつても、右僧侶がその住職として従前どおり家族と共に右建物に居住し、借地の使用関係に実質上の変化を生じない等原判示の事実関係(原判決理由ならびに同引用の第一審判決理由参照)のもとでは、敷地…
事件番号: 昭和33(オ)963 / 裁判年月日: 昭和37年3月29日 / 結論: 棄却
適法な転貸借がある場合、賃貸人が賃料延滞を理由として賃貸借契約を解除するには、賃借人に対して催告すれば足り、転借人に対して右延滞賃料の支払の機会を与えなければならないものではない。
事件番号: 昭和33(オ)1024 / 裁判年月日: 昭和35年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地所有者が土地の使用を容認していたとはいえない状況において、当該土地の明渡し等を求める請求は、特段の事情がない限り権利の濫用(民法1条3項)には当たらない。 第1 事案の概要:上告人(被告)が本件土地を使用していたところ、被上告人ら(原告)が土地所有権に基づき本訴請求(明渡し等)を提起した。上告…