判旨
農地の賃貸借の解除による土地の明渡し請求において、農地法所定の知事の許可がない場合には、解除の意思表示のみに基づき土地の明渡しを命ずることはできない。
問題の所在(論点)
農地の賃貸借契約を解除して土地の明渡しを求める際、農地法に基づく都道府県知事の許可がない場合でも、解除の意思表示のみによって明渡し請求が認められるか。
規範
農地の賃貸借を解除し、その引渡しを受ける行為は、農地法上の権利移動制限の趣旨に照らし、原則として都道府県知事等の許可を要する(農地法3条・18条参照)。当該許可が得られない限り、解除の効力は発生せず、または解除に基づく返還請求も認められない。
重要事実
上告人(賃貸人)が、被上告人(賃借人)に対し、農地の賃貸借契約を解除したと主張して土地の明渡しを求めた事案。上告人は、都道府県知事の許可がない状態であっても、契約解除の意思表示さえあれば土地の明渡しを命ずるべきであると主張して上告した。
あてはめ
農地法が農地の賃貸借の解消に制限を課している趣旨は、耕作者の地位の安定と農業生産力の維持にある。本件において、上告人は知事の許可がない状態での明渡しを主張するが、これは農地法上の制限を潜脱する独自の見解である。許可がない以上、法的に有効な解除に基づく明渡しを命ずることはできないと解される。
結論
知事の許可がない限り、契約解除の意思表示に基づき土地の明渡しを命ずることはできない。
実務上の射程
農地法上の許可(特に18条の解約制限)が明渡し請求の訴訟要件または請求原因事実の一部を構成することを確認する判例である。答案上は、農地の返還請求を論ずる際、物権的請求権や契約終了に基づく請求の要件として、知事の許可の有無を検討する際に引用する。
事件番号: 昭和38(オ)239 / 裁判年月日: 昭和39年10月16日 / 結論: 棄却
農地の賃貸借について更新しない旨の通知を発し、または解約の申入をする場合には、右通知または申入の効力の有無が訴訟上問題となるときであると否とを問わず、知事の許可を必要とし、右許可を得ないでした右通知または申入はその効力を生じないものと解すべきである。
事件番号: 昭和37(オ)218 / 裁判年月日: 昭和38年5月10日 / 結論: 棄却
農地賃貸借解除の意思表示は、裁判上なされる場合でも、知事の許可を受けていない以上、農地法第二〇条により無効と解する。