判旨
弁論の再開は裁判所の自由な裁量に属し、当事者に再開申立の機会を与える法的義務はない。また、適法な期日告知を受けたにもかかわらず正当な事由なく欠席した当事者に対し、更なる判決言渡期日の呼出を要しない。
問題の所在(論点)
裁判所の弁論再開義務の有無、および適法な呼出しを受けながら欠席した当事者に対する判決言渡期日の再告知の要否が問題となる。
規範
1. 弁論の再開(民事訴訟法153条)は裁判所の自由な裁量に属し、職権で行われるべきものである。 2. 適法な呼出しを受けながら正当な事由なく欠席した当事者に対しては、改めて判決言渡期日を告知・呼出しする必要はない。
重要事実
上告人は、原審の第一回口頭弁論期日に出頭し、次回の期日指定に異議を述べなかった。しかし、その後の期日において、上告人は診断書(軽うつ病)を添付した期日変更申請書を提出したものの、印紙の貼付がなく、かつ正当な事由なく欠席した。また、証人尋問の証拠調期日についても、印紙の貼付をなさず欠席したため、原審は証拠採用を取り消し、弁論を終結した。上告人は、弁論の再開や判決言渡期日の告知がなかったことを違法として上告した。
あてはめ
まず、弁論の再開については裁判所の広範な裁量に委ねられており、本件のように診断書の内容が「通院加療を要す」という程度に留まり、かつ申立手続に不備(印紙未貼付)がある状況下では、再開しないことに違法はない。次に、判決言渡期日の告知については、上告人は第二回口頭弁論期日に適法な呼出しを受けながら正当な事由なく欠席しており、既に手続保障の機会は与えられている。したがって、裁判所が重ねて言渡期日の呼出しを行う必要はなく、当事者の住所と裁判所所在地の距離等の事情もこの結論を左右しない。
結論
原審の判断に違法はなく、上告は棄却される。弁論を再開するか否か、および欠席当事者への言渡期日の再告知は、いずれも裁判所の裁量ないし手続的合理性の範囲内である。
実務上の射程
裁判所の訴訟指揮権と裁量を強調する事案である。答案上は、弁論再開の申立てに対する裁判所の義務を否定する文脈や、不誠実な当事者に対する期日告知の限界を論じる際に活用できる。ただし、現代の民事訴訟実務や手続保障の観点からは、特に判決言渡期日の告知について、本判例の射程を機械的に適用せず、慎重な検討が求められる場合がある点に留意が必要である。
事件番号: 昭和29(オ)182 / 裁判年月日: 昭和29年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】口頭弁論終結後の弁論再開の申請に対し、裁判所は必ずしもこれに応じ、弁論を再開しなければならない義務を負うものではない。 第1 事案の概要:上告人が口頭弁論終結後に弁論再開の申請を行ったが、原審(又は前審)において裁判所がこれに応じず、判決を言い渡した事案。上告人は、弁論再開の申請があった場合に再開…