判旨
破産法に基づく否認権行使によって生じる価額償還請求権の遅延損害金について、当該否認された行為が商行為である場合には、商法所定の法定利率(年6分)が適用される。
問題の所在(論点)
破産法上の否認権が行使された結果として生じる価額償還義務の遅延損害金について、民事法定利率(年5分)と商事法定利率(年6分)のいずれを適用すべきか。
規範
否認権行使に基づく原状回復としての価額償還債務が、商行為によって生じた債権(工事請負代金等)の決済に関連して発生したものである場合、その遅延損害金の算定には商事法定利率(旧商法514条、現行法では適用除外等の改正に注意)が適用される。
重要事実
建設業者である上告会社は、破産会社に対して工事請負代金債権を有していた。上告会社は当該債権の支払として、破産会社からトラックの代物弁済を受けた。その後、破産管財人(被上告人ら)が当該代物弁済を詐害行為として否認し、トラックの価額49万円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めて提訴した。
あてはめ
本件における代物弁済は、商人とみなされる建設業者(上告会社)がその営業の目的である工事請負代金債権を回収するために行われたものである。このように、否認の対象となった行為が商行為である場合、その効力が否定されたことによって生じる価額償還義務もまた、商行為によって生じた債務の性質を承継し、または商事取引に関連するものと解される。したがって、その遅延損害金には商事利率を適用するのが相当である。
結論
代物弁済が否認されたことによる価額償還請求権の遅延損害金には、商事利率年6分を適用すべきである。
実務上の射程
否認権行使に伴う利息・遅延損害金の利率に関する基準を示す。原因となった債権債務関係が商法的性質を有する場合には商事利率が適用されるという実務上の運用を肯定するものである。なお、民法・商法改正により現在は法定利率が変動制(当初3%)で統一されているため、現在の実務ではこの利率の差異の問題は解消されているが、債務の性質決定の論理としては参照し得る。
事件番号: 昭和38(オ)993 / 裁判年月日: 昭和41年4月14日 / 結論: その他
債務者(買主)が動産売買の先取特権の存する物件を被担保債権額(売買代金額)と同額に評価して当該債権者(売主)に代物弁済に供する行為は、売買当時に比し代物弁済当時に該物件の価格が増加していないかぎり、他の破産債権者を害する行為にあたらない。
事件番号: 昭和38(オ)669 / 裁判年月日: 昭和40年4月6日 / 結論: 棄却
代物弁済契約の否認により、原物に代わる利得の返還をなすべき範囲は、否認された行為の時における目的物の価額ではなく、否認権の行使される現時の価額を基準として決定すべきであると解すべきである。