破産会社の銀行に対する債権譲渡行為が否認された結果、右銀行が該債権の取立によつて得た金員相当額を返還する場合において、これに付すべき利息は、年六分の商事法定利率によるのが相当である。
否認権の行使による返還金に付すべき利息の利率。
破産法72条,破産法77条,商法514条
判旨
破産法上の否認権行使に基づく金銭の原状回復義務において、返還義務者は、破産財団が受取った金銭の利用機会を失ったことによる損失を填補するため、法定利息を付して返還すべきである。この際、反証がない限り、当該金銭は商行為に利用され得たものと認められ、商事法定利率(年6分)が適用される。
問題の所在(論点)
破産法上の否認権行使に基づき金銭を返還する場合において、原状回復の範囲として利息を付す必要があるか。また、その利率は民事法定利率(年5分)と商事法定利率(年6分)のいずれによるべきか。
規範
1. 破産法上の否認権行使による原状回復は、否認された行為がなかった原状に回復させ、財団が受けた損失を填補することを目的とする。2. 否認対象が金銭である場合、返還義務者は、財団が利用機会を失ったために当然蒙ったと認められる法定利息を付して返還すべきである。3. 取得原因が商事債権に関連し、商行為に利用され得たものと認められる場合は、商事法定利率を適用する。
重要事実
1. 破産会社Dは、銀行に対し運転資金の貸付を受け、その弁済に代えて売掛代金債権(約810万円)を譲渡した。2. 銀行は譲受債権を取引先Fから取立て、自己の債権に充当した。3. その後、Dが破産宣告を受け、破産管財人が当該債権譲渡を詐害行為等として否認した。4. 管財人は銀行に対し、取立金の返還とともに商事法定利率(年6分)による遅延損害金の支払いを求めた。
あてはめ
1. 本件債権譲渡は破産債権者を害するものであり、否認権の行使により無効となる。2. 銀行は受領した金銭を原状回復として返還する義務を負うが、財団側は当該金銭を運用する機会を奪われたといえるため、損失填補として法定利息を請求できる。3. 本件は銀行と会社間の取引に伴う売掛債権の譲渡であり、反証がない限り当該金銭は商行為に利用され得たと解される。したがって、商事法定利率を適用するのが相当である。
結論
破産管財人の請求を認め、銀行に対し、取立金に商事法定利率(年6分)を付した金額の支払いを命じる。
実務上の射程
否認権行使による原状回復が「価額償還」となる場合の利息の要否および利率を判断する際の基準となる。特に、商人間または商行為に関連する取引が否認された場合には、商事法定利率が適用される点に実務上の重要性がある(なお、改正商法により現在は商事法定利率も民事法定利率と一本化されているが、本判例の「損失填補として利息を付す」という考え方は現在も維持されている)。
事件番号: 昭和38(オ)993 / 裁判年月日: 昭和41年4月14日 / 結論: その他
債務者(買主)が動産売買の先取特権の存する物件を被担保債権額(売買代金額)と同額に評価して当該債権者(売主)に代物弁済に供する行為は、売買当時に比し代物弁済当時に該物件の価格が増加していないかぎり、他の破産債権者を害する行為にあたらない。
事件番号: 昭和39(オ)1216 / 裁判年月日: 昭和40年4月22日 / 結論: 棄却
破産債権者の相殺権の行使は、破産法第一〇四条の制限に服するのみであつて、同法第七二条各号の否認権の対象となることはないものと解すべきである。
事件番号: 昭和39(オ)166 / 裁判年月日: 昭和42年5月2日 / 結論: 棄却
破産者が支払停止以前にした本旨弁済でも、その弁済が他の債権者を害することを知つてされたものであるときは、破産法第七二条第一号により否認することができる。