債務者(買主)が動産売買の先取特権の存する物件を被担保債権額(売買代金額)と同額に評価して当該債権者(売主)に代物弁済に供する行為は、売買当時に比し代物弁済当時に該物件の価格が増加していないかぎり、他の破産債権者を害する行為にあたらない。
先取特権の目的物件をもつてした代物弁済は否認権の対象となるか
破産法第七二条第一号
判旨
否認権行使による原状回復として目的物の価額を償還する場合、その行為が商人間の取引による代物弁済であれば、特段の事情がない限り、返還すべき価額に付すべき利息は商事法定利率による。
問題の所在(論点)
破産法上の否認権行使に基づく原状回復として価額償還がなされる場合において、否認された行為が商行為であるとき、付されるべき利息の利率は民事法定利率(年五分)か、商事法定利率(年六分)か。
規範
否認権行使による原状回復義務は、否認された行為がなかった原状に回復させ、破産財団の損害を填補することを目的とする。返還すべき物品が既に現存しない場合の価額償還にあたっては、目的物の価格に加え、その利用機会の喪失等による法定利息を返還すべきである。この場合、当該代物弁済が商行為としてなされたときは、特段の事情がない限り、当該目的物は商行為に利用され得たものと認められるため、その利率は商事法定利率(年六分)とするのが相当である。
重要事実
破産者D薬品は、支払停止後の昭和30年1月、債権者である被告会社に対し、売掛金債務の回収として自社製薬品等を搬出させた。同年5月、Dと被告会社は、当該物件を30万円と評価し、売掛金債務の一部に充てる代物弁済契約を締結し所有権を移転させた。その後Dは破産宣告を受け、破産管財人が当該代物弁済を否認した。なお、否認対象の物件は既に被告の手元になく、価額償還が必要な状況であった。第一審及び原審は、返還すべき金員に対する利息を民事法定利率(年五分)としたため、被告側が上告した。
あてはめ
本件における代物弁済は、薬品卸売業者と商事会社という商人間の取引(商行為)によりなされたものである。否認によって返還されるべき目的物は、本来であれば商行為に利用され得たものであると認められる。したがって、破産財団がその利用機会を失ったことによる損害を填補するためには、特段の反証がない限り、商法所定の年六分の利率を適用して利息を算出するのが、原状回復の趣旨に合致する。原審がこれを一律に民事法定利率によるべきとした判断は、法解釈を誤ったものといえる。
結論
商行為に該当する代物弁済が否認された場合の価額償還額に付すべき利息は、商事法定利率(年六分)によるべきである。
実務上の射程
破産法上の否認権(現行法160条以下)の行使に伴う原状回復義務(167条1項)において、目的物の返還が不能な場合の価額償還の範囲を確定させる際に用いる。商人間での取引が否認された場合には、民事法定利率ではなく商事法定利率(旧商法514条。現在は民法改正により法定利率は変動制に統一されているが、当時の判断枠組みとして重要)が適用されるという実務上の取り扱いを裏付けるものである。
事件番号: 昭和38(オ)513 / 裁判年月日: 昭和39年8月28日 / 結論: 棄却
取立の便宜のため債権の信託的譲渡がなされ、譲受人によつて訴が起こされても、必ずしも、信託法第一一条にいう「訴訟行為をなさしむることを目的」とするとはいえない。