判旨
裁判所が証拠の取捨判断を行うにあたっては、各証拠に対する証拠判断が示されていることが必要であり、特段の違法が認められない限り、原審の自由な心証に基づく判断は維持される。
問題の所在(論点)
事実認定における証拠の取捨判断に違法があるといえるか。具体的には、原審が各証拠に対して適切な判断を示しているか、および自由心証の範囲内であるかが問題となる。
規範
事実認定は原審の専権事項であり、証拠の取捨選択およびその評価は、論理則や経験則に反するなどの特段の違法がない限り、裁判所の自由な心証に委ねられる(自由心証主義の原則)。
重要事実
上告人は、原審における証拠判断に不備があること、および乙号証の成立等について争い、原審の証拠取捨判断に違法があるとして上告した。これに対し、原審は更正決定を含めて検討すると、提出された各証拠に対して一定の証拠判断を示しており、被上告人が乙号証の成立を否認している事実も確認されていた。
あてはめ
原判決と更正決定を併せて検討すると、原審は各証拠に対して証拠判断を明示している。また、乙号証の成立についても争点として認識されており、適正な手続を経て評価されている。したがって、原審の証拠の取捨選択の過程に論理的な矛盾や違法な点は認められず、自由心証の範囲内にあると評価できる。
結論
原審の証拠の取捨判断に違法な点は認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は自由心証主義の原則を確認するものである。実務上、事実認定の違法を主張する際には、単なる評価の不当を述べるだけでなく、証拠判断の欠落や論理則・経験則違反といった具体的な違法事由を特定する必要があることを示唆している。
事件番号: 昭和25(オ)15 / 裁判年月日: 昭和29年2月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証拠の信憑性がないと判断してこれを採用しない場合、その具体的な理由を論理的に解明して判決に説示する必要はない。自由心証主義は、法定証拠主義からの解放のみならず、証拠の採否決定における心証形成の理由解明を要しない意義も包含する。 第1 事案の概要:上告人(賃貸人)が、被上告人(賃借人)に対し…