判旨
警察官が職務命令に基づく規程に従い、保安上の目的で精神障害者名簿に特定人を登載し視察を行うことは、強制を伴わず公共の秩序維持等の範囲内にある限り、直ちに違法とはいえない。
問題の所在(論点)
法律の根拠に基づかない内部規程に従ってなされた警察官による名簿登載および視察行為が、公権力の行使として違法となるか。また、それにより名誉毀損等の不法行為が成立するか。
規範
行政内部の職務命令(訓令)にすぎない規程に基づく行為であっても、(1)生命・財産に対し強制を伴わず、かつ(2)公共の秩序維持、生命財産の保護、防犯の事務という警察の職務範囲内に属するものであれば、当該規程の有無にかかわらず、警察の職務として適法に行い得る。
重要事実
警察署の担当係官が、上告人の性格や行動に著しく常人と異なる傾向があることを看取し、職務命令である「非監置精神病者視察規程」等に基づき、上告人を「非監置精神病者名簿」に登載して精神障害者として取り扱った。当該名簿は部外秘として厳重に管理され、第三者への閲覧は一切禁止されていた。上告人は、かかる名簿登載および視察が違法な職権濫用であり人格権・名誉を毀損したとして争った。
あてはめ
本件の名簿登載および視察は、何ら強制を伴うものではなく、公共の安寧を維持する警察の職務範囲内にある。また、上告人の言動が常人と著しく異なるという状況下において、部外秘の帳簿に登載し保安上の措置を講じたことは、当時の状況に照らし止むを得ない措置であったといえる。したがって、警察職員に違法行為や職権濫用があったとは認められず、人格権や名誉を毀損したものとは解されない。
結論
本件警察官の行為は適法な職務執行の範囲内であり、上告人の人格権や名誉を毀損するものではない。上告棄却。
実務上の射程
警察による任意捜査や行政警察活動の限界、およびプライバシー権(人格的利益)との均衡が問題となる事案で引用し得る。強制を伴わない「事実行為」については、法律の留保原則の適用が緩やかであることを示す一例となるが、現代では個人情報保護の観点から、より厳格な比例原則やプライバシー保護の要請が加味される点に注意が必要である。
事件番号: 昭和52(オ)323 / 裁判年月日: 昭和56年4月14日 / 結論: 棄却
弁護士法二三条の二に基づき前科及び犯罪経歴の照会を受けたいわゆる政令指定都市の区長が、照会文書中に照会を必要とする事由としては「中央労働委員会、京都地方裁判所に提出するため」との記載があつたにすぎないのに、漫然と右照会に応じて前科及び犯罪経歴のすべてを報告することは、前科及び犯罪経歴については、従来通達により一般の身元…