判旨
占領下における団体等規正令は、憲法の枠外で法的効力を有していたため、同令違反の被疑事件に関する警察官の捜査は適法な公務執行にあたる。また、自白調書の任意性が否定されない限り、これらを証拠として採用することは憲法38条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 平和条約発効前において、憲法の枠外で効力を有するとされた団体等規正令に基づく警察官の捜査が、適法な公務執行といえるか。2. 強制や拷問等の疑いが記録上認められない自白調書を証拠とすることが、憲法38条に違反するか。
規範
1. 昭和27年の平和条約発効前、わが国が連合国の占領下にあった当時においては、ポツダム宣言等の要請に基づくポツダム命令(団体等規正令等)は、日本国憲法の枠外において法的効力を有する。したがって、同令に基づく捜査は適法な公務執行となる。2. 自白調書が強制、拷問、誘導等に基づき任意性を欠くものと認められない限り、これを証拠として採用することは憲法38条に違反しない。
重要事実
被告人らは、昭和27年2月3日に発生した事件(平和条約発効前の占領下)に関し、公務執行妨害等の罪に問われた。被告人らは、当時の団体等規正令に基づく警察官の捜査は不当な弾圧であり、違法な捜査に対する抵抗であるから公務執行妨害罪は成立しないと主張。また、検察官作成の供述調書は捜査官によるデッチ上げや拷問等により任意性を欠くものであり、証拠能力が認められないと主張して上告した。
あてはめ
1. 本件事件当時は平和条約発効前であり、当裁判所の判例によれば団体等規正令は憲法外で法的効力を有していた。したがって、同令違反の被疑事件について警察官が捜査を行うことは、適法な公務執行行為に属し、違法な捜査とはいえない。2. 被告人らの検察官供述調書について、記録を精査しても強制、拷問、誘導等により任意性を欠くものとは認められない。したがって、証拠の取捨選択に関する原審の判断に憲法違反の過誤はない。
結論
警察官の捜査は適法な公務執行であり、任意性が認められる自白調書を証拠とすることは憲法に違反しない。本件上告を棄却する。
事件番号: 昭和25(あ)1788 / 裁判年月日: 昭和30年3月25日 / 結論: 棄却
平和条約発効前の占領下において、団体等規正令並びに、昭和二三年政令第二三八号に基く法務総裁または都道府県知事の命により解散団体の財産の接収に従事する公務員に対し、その接収の職務執行中、暴行脅迫を加えたときは、公務執行妨害罪が成立する。
実務上の射程
占領下の特殊な法的状況(ポツダム命令の効力)に関する判例であり、現在の実務上の射程は限定的である。しかし、自白の任意性に関する判断枠組みや、公務執行妨害罪における「職務の適法性」の判断基準を示す事例として参照される。
事件番号: 昭和28(あ)3042 / 裁判年月日: 昭和30年5月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】占領軍の指令に基づくポツダム命令(いわゆるウイロビー覚書を含む)の合憲性・有効性については、先行する大法廷判決の趣旨に照らし、憲法違反や無効の主張を認めることはできない。 第1 事案の概要:被告人らは、占領下における連合国軍最高司令官の指令に基づき発せられた、いわゆる「ウイロビー覚書」に関連する規…
事件番号: 昭和32(あ)1129 / 裁判年月日: 昭和35年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当に長く抑留または拘禁された後の自白であっても、その任意性が十分認められる場合には、憲法38条2項により証拠能力が否定されることはない。 第1 事案の概要:被告人らは、共産党員やその支持者、朝鮮人であることを理由とした政治的弾圧であると主張して上訴した。また、供述調書の作成にあたり、不当に長く抑…