平和条約発効前の占領下において、団体等規正令並びに、昭和二三年政令第二三八号に基く法務総裁または都道府県知事の命により解散団体の財産の接収に従事する公務員に対し、その接収の職務執行中、暴行脅迫を加えたときは、公務執行妨害罪が成立する。
平和条約発効前における団体等規正令並びに昭和二三年政令第二三八号に基く法務総裁または都道府県知事の命により解散団体の財産接収に従事する公務員と交務執行妨害罪
刑法95条,団体等規正令4条,昭和23年政令238号解散団体の財産の管理及び処分等に関する政令3条,昭和23年政令238号解散団体の財産の管理及び処分等に関する政令5条,昭和23年政令238号解散団体の財産の管理及び処分等に関する政令6条,昭和23年政令238号解散団体の財産の管理及び処分等に関する政令16条
判旨
占領下においてポツダム宣言の受諾に伴う命令に基づき制定された団体等規正令等の政令は、日本国憲法の規定にかかわらず有効な国法として存在し、これらに基づく行政処分や公務員の職務執行も適法なものとして扱われる。
問題の所在(論点)
ポツダム宣言の受諾に伴う命令に基づく政令が憲法に優先して有効か、およびそれに基づく公務員の職務執行が刑法95条1項にいう「職務」として適法性を有するか。
規範
占領下におけるポツダム宣言の受諾に伴う命令に基づき制定された政令(いわゆるポツダム政令)は、日本国憲法の規定にかかわらず、当時における有効な国法として存在する。また、当該政令に基づく行政処分の効力を争うことについて、当時の我が国の裁判所は裁判権を有しない。
重要事実
昭和24年9月、団体等規正令および昭和23年政令第238号に基づき、法務総裁の命令を受けた都道府県知事が解散団体の財産接収を実施した。被告人らは、この接収に従事していた係員の職務執行を妨害したとして、公務執行妨害罪に問われた。
あてはめ
本件行為が行われた昭和24年当時は占領下にあり、団体等規正令および政令238号は憲法にかかわりなく有効な国法であった。また、これらに基づく法務総裁の処分の効力を争う裁判権は認められていなかった。したがって、法務総裁の命令に基づく都道府県知事の接収処分は適法であり、その命令に従い接収に従事した公務員の行為も適法な公務執行に該当するといえる。
結論
被告人らの行為は適法な公務の執行を妨害したものであり、公務執行妨害罪が成立する。
実務上の射程
憲法制定後の占領下において、連合国軍最高司令官の要求に基づく特別の法的効力(憲法的秩序外の効力)が認められたポツダム政令の性質を確認した判例である。公務執行妨害罪の「適法性」の判断において、当時の特殊的法状況を考慮した実務上の先例として機能する。
事件番号: 昭和27(れ)73 / 裁判年月日: 昭和33年1月29日 / 結論: 棄却
一 わが国の公務員が、連合国最高司令官またはその委任により進駐軍当局が占領目的遂行のために発した命令に基き、進駐軍当局の占領目的遂行のための行動に協力し、または、これを補助する行為は、刑法第九五条第一項にいう「公務員ノ職務ノ執行」にあたる。 二 警察官吏または収税官吏のした臨検、捜索、押収等の行為が、連合国進駐軍の司令…
事件番号: 昭和38(あ)1208 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
いやしくも被告人が団体または多衆の威力を示して、刑法第二二二条の脅迫罪を犯した以上、たとえ、その団体または多衆が合法的な集団であつても、なお、暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条第一項の適用を免れない(昭和二四年(れ)第一六二二号同二八年六月一七日大法廷判決、刑集七巻六号一二八九頁参照)。