一 わが国の公務員が、連合国最高司令官またはその委任により進駐軍当局が占領目的遂行のために発した命令に基き、進駐軍当局の占領目的遂行のための行動に協力し、または、これを補助する行為は、刑法第九五条第一項にいう「公務員ノ職務ノ執行」にあたる。 二 警察官吏または収税官吏のした臨検、捜索、押収等の行為が、連合国進駐軍の司令官の命令に基き且つその下僚の直接指揮の下に、進駐軍当局の占領目的遂行のための行動に協力し、または、これを補助したものである場合には、裁判官の令状なくして行われたものであつても、憲法第三五条に違反しない。
一 わが国の公務員が進駐軍当局の命令によりその占領目的遂行のための行動に協力、補助する行為と刑法第九五条第一項にいう「公務員ノ職務ノ執行」 二 警察官吏または収税官吏が、裁判官の令状なくして、進駐軍当局の命令によりなした臨検、捜索、押収等の行為と憲法第三五条
降服文書(昭和20年9月2日)5項,指令1号(昭和20年9月2日)12項,憲法35条,刑法95条1項,間接国税犯則者処分法2条,間接国税犯則者処分法5条(昭和22年法律29号による改正後のもの),国税犯則取締法2条,国税犯則取締法5条
判旨
占領下において連合国軍の命令に基づき、その占領目的遂行を補助・協力するために日本の公務員が行う行為は、刑法95条1項にいう「公務」に該当し、また、かかる連合国軍の行動に資する行為については、憲法35条の令状主義の規定は適用されない。
問題の所在(論点)
1. 連合国進駐軍の命令・指揮下で行われる日本の公務員の活動が、刑法95条1項の「公務」に含まれるか。 2. 進駐軍の占領目的遂行を補助する行為について、憲法35条の令状主義が適用されるか(職務の適法性の判断基準)。
規範
1. 刑法95条1項の「公務」について:わが国が連合国の占領下にある当時、わが国の官憲は占領目的遂行のために発せられる命令を遵守・施行する義務を負っており、これに基づき日本の公務員が進駐軍の行動に協力・補助する行為も、わが国の公務員としての職務(公務)に該当する。 2. 憲法35条の令状主義について:連合国軍の行動は、わが憲法や法律の制約に係わりなく行われるものである。したがって、進駐軍の命令に基づき、かつその直接指揮下で行われる占領目的遂行のための協力・補助行為についても、わが国の憲法・法律に従って裁判官の令状を求める必要はない。
事件番号: 昭和25(あ)1788 / 裁判年月日: 昭和30年3月25日 / 結論: 棄却
平和条約発効前の占領下において、団体等規正令並びに、昭和二三年政令第二三八号に基く法務総裁または都道府県知事の命により解散団体の財産の接収に従事する公務員に対し、その接収の職務執行中、暴行脅迫を加えたときは、公務執行妨害罪が成立する。
重要事実
昭和20年代の占領下の日本において、警察官及び収税官吏が、進駐軍情報部野戦公安隊司令官(L少佐)の命令により、同隊軍曹の指揮の下で朝鮮人部落に赴き、密造酒検挙のために臨検・捜索・差押に着手した。これに対し、被告人らが暴行・脅迫を加えたため、公務執行妨害罪(刑法95条1項)に問われた。弁護人は、①当該職務は他国のための活動であり日本の「公務」ではないこと、②令状なく行われた捜索等は憲法35条に違反し「適法な職務執行」ではないことを主張した。
あてはめ
1. 公務性について:本件警察官等は、進駐軍の占領目的遂行のために発せられた命令に従い、その協力・補助として活動している。当時の国内法秩序において、このような占領軍への協力はわが国の公務員が負うべき義務の一環であるから、その職務内容はわが国の「公務」の執行にあたるといえる。 2. 適法性(令状の要否)について:本件臨検等は、司令官の命令に基づき下僚の直接指揮下で行われた。連合国軍自体の行動にはわが憲法の制約が及ばない以上、その補助として行われる行為についても、憲法35条に基づく裁判官の令状は不要である。したがって、令状なしの捜索等は適法であり、これを妨害する行為は公務執行妨害罪を構成すると解される。
結論
本件警察官らの職務は刑法95条1項の公務に該当し、かつ令状を要しない適法な職務執行であるため、被告人らには公務執行妨害罪が成立する。
実務上の射程
本判決は占領下という特殊な統治構造下での判断であり、現在の「公務」の解釈や令状主義の例外を一般化するものではない。しかし、公務執行妨害罪における「職務の適法性」の判断において、当時の憲法体系を超越した「占領軍の命令」を上位規範として認めた歴史的・憲法学的意義を持つ。答案上は、職務執行の適法性判断における令状主義の適用範囲の限界を示す特殊例として位置づけられる。
事件番号: 昭和24(れ)1953 / 裁判年月日: 昭和25年1月24日 / 結論: 棄却
被告人Aは同人の居宅を訪れ屋内を捜索中の米子税務署勤務大藏事務官B同税務署雇Cに對し、捜索に來た税務官吏であることは推察しながら、右Cの腕をつかんで同家の土間に引つぱり下したり、B事務官が木桶に封印するのを邪魔しようとしたりして、暴力を加えその圓滿な職務の執行を妨げたというのである。右のCは所論のように單獨だつたのでは…