判旨
警察官職務執行法2条1項に基づく職務質問において、相手方を逮捕した事実が認められない場合には、憲法33条が定める令状主義の規定には違反しない。
問題の所在(論点)
警察官職務執行法2条1項に基づく職務質問の過程で、警察官が執った行為が憲法33条(令状主義)に違反するか。その前提となる「逮捕」の事実認定の重要性が問われた。
規範
警察官職務執行法2条1項に基づく職務質問に伴う行為が、身辺の拘束や強制を伴い、実質的に「逮捕」にあたる事態に至らない限り、憲法33条(令状主義)の適用の余地はない。
重要事実
巡査Aが被告人に対して実施した職務質問およびそれに付随する行為について、被告人はこれらを違法な強制処分であると主張し、憲法31条(適正手続)および憲法33条(令状主義)に違反すると訴えた。しかし、原審において当該巡査が被告人を実際に逮捕したという事実は認定されなかった。
あてはめ
弁護人は、警察官の執った行為が憲法33条違反であると主張する。しかし、原判決の認定によれば、当該巡査が被告人を逮捕したとの事実は存在しない。憲法33条は、現行犯逮捕等の例外を除き令状によらなければ「逮捕」されないことを保障する規定であるため、逮捕の事実自体が欠けている本件においては、同条違反を議論する前提を欠いているといえる。
結論
被告人を逮捕した事実が認められない以上、憲法33条違反の主張は前提を欠き、失当である。
実務上の射程
本判決は、職務質問と強制処分の限界について、事実認定として「逮捕」に至っていない場合には令状主義の問題は生じないことを示唆している。答案上は、職務質問の適法性が争点となる際、まず不利益処分の程度が「逮捕」に至る強制的なものか、それとも任意捜査の範囲内(警職法2条)であるかを事実関係から画定する際の手がかりとなる。
事件番号: 昭和28(あ)4409 / 裁判年月日: 昭和30年7月19日 / 結論: 棄却
巡査から挙動不審者として職務質問を受け、派出所まで任意同行を求められた者が、突如逃走した場合に、巡査が単に職務質問をしようとして追跡しただけでは、人の自由を拘束したものではなく、巡査の職務行為として適法である。