判旨
元本確定前であっても、債権者、債務者および譲受人の三者の合意がある場合には、特定の当座貸越契約から生じる債権を根抵当権と共に譲渡することが可能である。
問題の所在(論点)
元本確定前の根抵当権において、特定の取引から生じた債権を、債権者・債務者・譲受人の三者合意により、根抵当権と共に譲渡することができるか。
規範
根抵当権は、元本確定前においては、原則として根抵当権のみを譲渡することはできない。しかし、元本確定前であっても、債権者(譲渡人)、債務者および債権譲受人の三者間における合意があれば、特定の取引契約(当座貸越契約等)に基づく債権を、その担保たる根抵当権と共に移転させることは妨げられない。
重要事実
上告人とD銀行との間で当座貸越契約が締結されていたが、D銀行、上告人およびE銀行の三者間で債権者の交代による更改および根抵当権移転契約がなされた。その後、E銀行が上告人に弁済を督促したため、上告人の代理人(本庄)はFと交渉し、Fが対価を支払ってE銀行から上告人に対する債権を根抵当権と共に譲り受ける合意(債権者E、譲受人F、債務者上告人の三者合意)を成立させた。Fは譲受債権を確定させ、根抵当権を抵当権に変更した上で競売を申し立てたが、上告人はこの譲渡の無効を主張した。
あてはめ
本件では、当座貸越契約に基づく債権について、債権者であるE銀行、譲受人であるF、および債務者である上告人の代理人が、当該債権を根抵当権と共に譲渡することに合意している。元本確定前であっても、このように債務者を含めた当事者全員の意思が合致している場合には、随伴性を欠く根抵当権であっても、特定の債権を移転させる実益が認められる。したがって、当座貸越契約を解約して債権を確定させた後の譲渡でなくとも、三者合意に基づく債権および根抵当権の譲渡は有効であると解される。
結論
債権者、譲受人、債務者の合意がある以上、元本確定前であっても債権および根抵当権の譲渡は有効であり、これに基づく登記を無効とすべき理由はない。
事件番号: 昭和27(オ)295 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: その他
抵当権実行による競売手続において競落により不動産を取得した者およびその者から右不動産を買受けた者を共同被告として右不動産の所有者として抵当権の効力を否定する者から各所有権取得登記の抹消を求める訴は、訴訟の目的が共同訴訟人の全員につき合一にのみ確定すべき場合に当らない。
実務上の射程
民法398条の7第1項等の改正前判例であるが、元本確定前における根抵当権の処分の特例を示す。実務上は、債務者の承諾(三者合意)がある場合に限り、特定の債権と共に根抵当権を譲渡できるという「三者合意による譲渡」の有効性を裏付ける判例として機能する。
事件番号: 昭和33(オ)251 / 裁判年月日: 昭和36年1月17日 / 結論: 棄却
病身の夫が家族との不和と療養の関係からさして遠方でない土地に別居中、妻が無断で夫の印章を偽造し、夫の代理名義で夫所有の土地家屋を代金三一〇万円で売却した場合、交渉の行われた場所が当該の家屋であり、家族の収入は妻名義でなす貸間収入で賄われており、成人した子供達が交渉の際同席する等、一応妻に代理権があると信じさせるような事…
事件番号: 昭和25(オ)313 / 裁判年月日: 昭和28年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産を他人の名義を借りて払い下げを受け、自己の費用で建物を建築した実質的権利者は、承諾なくなされた名義人による保存登記に拘束されず、当該建物の所有権を主張できる。 第1 事案の概要:被上告人は、上告人Aの名義を使用して建物の払下げを受け、自己の費用で当該建物(二棟)を分割建築した。しかし、上告人…
事件番号: 昭和27(オ)893 / 裁判年月日: 昭和29年7月27日 / 結論: 棄却
双方の給付が同時履行の関係にある場合反対給付の提供をしないでした催告にもとづく契約解除は効力を生じない。
事件番号: 昭和31(オ)464 / 裁判年月日: 昭和34年9月22日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】債務者が窮迫した事情の下で、債務額の約5倍の価額を有する不動産を代物弁済に供する約定は公序良俗に反し得るが、第三者の支払委託に基づく求償権の担保としての性質も有する場合、その実質的な支払額や求償権の範囲を考慮して慎重に判断すべきである。 第1 事案の概要:債務者(被上告人)は、訴外Dとの間で元金3…