判旨
民法130条に基づき、条件の成就を妨げた相手方に対して条件が成就したものとみなす主張をするためには、同条の規定に基づく権利行使としての明確な意思表示が必要である。
問題の所在(論点)
民法130条(条件成就の擬制)の適用を認めるために、当事者による「同条に基づく権利行使としての意思表示」が必要か。また、単なる事実の主張がこれに該当するか。
規範
条件の成就によって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方はその条件が成就したものとみなすことができる(民法130条)。この規定の適用を主張するためには、単に事実関係を述べるだけでは足りず、同条の規定に基づく権利行使としての意思表示(抗弁としての主張等)が必要である。
重要事実
店舗賃貸借契約の合意解約について、特定の事象が発生することを停止条件とする合意がなされた。賃借人である上告人は、賃貸人である被上告人が故意に条件の成就を妨げたと主張し、原審においてその旨の事実関係を陳述した。しかし、上告人は民法130条の規定に基づく権利行使としての明示的な意思表示は行っていなかった。
あてはめ
上告人は原審において、相手方が条件成就を妨げた旨の事実は主張している。しかし、記録上、それは単なる事実の陳述に留まっており、民法130条を根拠として条件成就を擬制するという法的な権利行使としての意思表示とは認め難い。裁判所は、当事者による明確な権利行使がない以上、当該条項の適用について特段の判断を示す義務を負わない。
結論
民法130条に基づく権利行使としての意思表示が認められない以上、原判決が同条の適用について判断を示さなかったことに違法はない。
実務上の射程
事件番号: 昭和33(オ)609 / 裁判年月日: 昭和35年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本訴において所有権取得の経過的事実として主張され相手方が認めた事実は、反訴における占有権原として当然に主張されたものとはみなされない。占有権原の抗弁について格別の主張・立証がない限り、弁論主義に反することなく明渡請求を認容できる。 第1 事案の概要:上告人(本訴原告・反訴被告)は、被上告人(本訴被…
条件成就の擬制(130条)を実務上の抗弁として用いる際、要件事実として「条件成就を妨げた事実」を主張するだけでなく、その効果として「条件が成就したものとみなす」という意思表示(権利行使)を明確に主張する必要があることを示唆する。答案上は、条件成就の擬制を主張する際にこの意思表示の要否が問題となる場面で引用し得る。
事件番号: 昭和33(オ)44 / 裁判年月日: 昭和35年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金銭借入の担保として不動産につき買戻特約付売買契約を締結し、売買代金と借入金債務を相殺して既存債務を消滅させる形式の契約は、一種の担保形式として有効である。また、不動産の評価額と売買代金に開きがあっても、直ちに公序良俗に反して無効となるわけではない。 第1 事案の概要:上告会社は、被上告人から20…
事件番号: 昭和32(オ)923 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
一 知事の許可を得ることを条件として農地の売買契約をしたとしても、いわゆる停止条件を附したものということはできない。 二 農地の売主が故意に知事の許可を得ることを妨げたとしても、買主は条件を成就したものとみなすことはできない。
事件番号: 昭和28(オ)441 / 裁判年月日: 昭和31年7月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】抵当権の設定を承諾したにもかかわらず、相手方の欺罔行為によって売買を原因とする所有権移転登記がなされた場合、その売買契約は錯誤により無効(現行法上の取消し)となる。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、上告人A(被告)に対する債務の担保として、本件建物につき抵当権を設定することを承諾した。しかし…