判旨
判決書の原本に基づかない判決正本の送達等、民事訴訟法上の送達に関する規定は任意規定であるから、これに違背しても上告理由とはならない。また、判決正本に裁判官の氏名記載が欠けていても、補正を求めるべき事由に留まり、送達の効力自体は否定されない。
問題の所在(論点)
1. 判決の送達手続に関する規定(旧民事訴訟法193条)の違背が、適法な上告理由となるか。2. 判決正本に裁判官の氏名記載がない場合、送達の効力が否定されるか。
規範
判決書の送達手続に関する規定(旧民事訴訟法193条、現行255条等)は任意規定である。したがって、送達手続に瑕疵があったとしても、それが直ちに上告理由(判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反)を構成することはない。また、判決正本の記載不備については補正が可能であり、当然に送達の効力が無効となるものではない。
重要事実
上告人は、原判決の送達が旧民事訴訟法193条の規定に違背していること、および上告人に送達された原判決正本に判決を下した裁判官の氏名の記載がなかったことを理由として、適法な送達がなされていない旨を主張し、上告を申し立てた。また、上告理由書の提出期間経過後に追加の上告理由書を提出した。
あてはめ
まず、旧民訴法193条は任意規定であるため、これに違背したとしても上告理由にはならないと解される。次に、判決正本に裁判官の氏名が記載されていない点については、当該不備はいつでも補正を求めることができる性質のものであり、その欠落をもって直ちに正本の送達がなかったものと評価することはできない。したがって、送達の効力自体を争う上告人の主張は採用できない。
結論
本件上告は棄却される。判決正本の記載不備や送達手続の瑕疵は、本件の状況下では適法な上告理由とはならず、送達の効力も失われない。
実務上の射程
手続規定の任意規定性と瑕疵の治癒・補正に関する判断を示している。答案上では、送達の瑕疵が判決の確定や不服申立期間の進行に及ぼす影響を検討する際、形式的な不備が直ちに無効を招くわけではないことを示す根拠として活用できる。特に判決書正本の方式不備が上告理由(民訴法312条等)に該当するかを論じる際に有用である。
事件番号: 平成7(オ)374 / 裁判年月日: 平成7年9月5日 / 結論: 棄却
物上保証人に対する不動産競売において、開始決定の債務者への送達がいわゆる付郵便送達によりされた場合には、決定正本が郵便に付して発送されたことによっては被担保債権の消滅時効の中断の効力を生ぜず、右正本の到達によって初めて時効中断の効力を生ずる。