判旨
発明の新規性判断において、公知・慣用の各部分装置を組み合わせた発明は、それらの単なる寄せ集めに過ぎず、総合により独自の効果を生じない限り、新規性を有しない。また、発明の要旨認定は、特許請求の範囲の記載のみならず、明細書及び図面の全体の記載を総合して判断されるべきである。
問題の所在(論点)
1. 公知技術の組み合わせからなる発明に新規性が認められるための要件。2. 発明の要旨を認定する際の判断手法。3. 引用例の実施可能性を認定する際の証拠調べの要否。
規範
1. 新規性の判断基準:出願前の公知・慣用技術を組み合わせた発明(寄せ集め発明)については、各部分装置の総合により、各部分が互いに関連して独自の効果を生ぜしめるものでない限り、新規性を有しない。2. 発明の要旨認定:明細書の「特許請求の範囲」の記載に加えて、明細書及び図面の全体の記載を総合して認定する。
重要事実
上告人は、原願の発明を6つに分割して出願した。そのうちの一つである家庭用編物機械(手編機、自動停止装置、糸導装置等を備えるもの)について、拒絶査定及び審決取消訴訟の提起に至った。原審は、当該発明の各部分装置は公知または慣用のものであり、それらを組み合わせても独自の新規な効果が生じないとして、新規性を否定した。これに対し、上告人はプレッサー部分の要旨認定の誤りや、引用例の実施可能性の判断不備等を理由に上告した。
あてはめ
1. 本件出願の発明は、各部分装置が既に出願前において公知または慣用されていた。これらを単に組み合わせたに過ぎず、各装置が相まって独自の効果を発揮しているとは認められないため、新規性は否定される。2. プレッサー部分が発明の要旨に含まれるか否かは、特許請求の範囲だけでなく明細書・図面を総合すれば、要旨を構成しないとした原判断は相当である。仮にこれを含めても、全体として独自の効果が生じない以上、結論に影響しない。3. 引用例の各部分が実施可能であるかは裁判官の通常の知識で判断可能であり、個別の証拠調べを要さずに判断した原審に違法はない。
結論
本件発明は、公知技術の単なる寄せ集めに過ぎず、独自の効果を生じさせるものではないため、新規性を欠き、拒絶査定は適法である。上告棄却。
事件番号: 昭和32(オ)985 / 裁判年月日: 昭和36年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】分割出願の適法性は原出願の拒絶査定の適否に左右されず、公知の技術的手段を単に置換したに過ぎない発明は、特段の新規な発明思想を含まないため新規性が否定される。 第1 事案の概要:上告人は、原出願を6個に分割したうちの1つとして、家庭用編物機の機体を台板等に起伏自在に取り付ける発明につき特許出願を行っ…
実務上の射程
特許法上の「発明の要旨認定」および「新規性」の判断枠組みを示す典型例として機能する。特に、複数の公知技術を組み合わせた発明の進歩性(本判決当時は新規性の枠組みで議論)を否定する際の「単なる寄せ集め」という論理、および、クレーム解釈において明細書・図面を参酌する実務の基礎となる。
事件番号: 昭和32(オ)984 / 裁判年月日: 昭和36年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】分割出願の拒絶査定の適法性は、原出願の拒絶査定の適否とは別個に判断される。引用発明と根本的な技術思想が同一であれば、単なる材質の変更による耐久性の向上などは新規性を基礎付けず、引用例の一部が実施可能であれば、装置全体としての実施可能性を審理せずとも新規性を否定できる。 第1 事案の概要:上告人は原…
事件番号: 昭和32(オ)986 / 裁判年月日: 昭和36年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特許の分割出願とその拒絶査定を巡る訴訟において、原願と分割願は別個の事件であり、同一の審査官や審判官が双方に関与したとしても、直ちに除斥・忌避事由等の手続的違法は認められない。また、引用発明が技術的に実施可能であると判断される限り、新規性は否定され、当該拒絶審決は適法となる。 第1 事案の概要:上…
事件番号: 昭和32(オ)988 / 裁判年月日: 昭和36年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】分割出願は元の出願(原願)とは別個の事件であり、原願の拒絶査定に違法があるとしても分割願の拒絶査定を直ちに違法とするものではなく、また、同一の審判官が双方に関与しても法に抵触しない。 第1 事案の概要:上告人は原願の発明を6個に分割して出願したが、そのうちの一つの発明について拒絶査定を受け、審判で…
事件番号: 昭和29(オ)331 / 裁判年月日: 昭和30年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特許出願された発明が、先行する公知の技術(実用新案出願公告にかかる方法)と同一である場合には、新規性を欠くものとして特許を認めないのが相当である。 第1 事案の概要:上告人は、自らの発明について特許出願を行ったが、特許庁の審決において、当該発明は昭和23年実用新案出願公告第1357号に記載された方…