判旨
特許の分割出願とその拒絶査定を巡る訴訟において、原願と分割願は別個の事件であり、同一の審査官や審判官が双方に関与したとしても、直ちに除斥・忌避事由等の手続的違法は認められない。また、引用発明が技術的に実施可能であると判断される限り、新規性は否定され、当該拒絶審決は適法となる。
問題の所在(論点)
1. 原願の拒絶査定の適否が、分割願の拒絶審決の適否に直接影響を及ぼすか。 2. 同一の審査官・審判官が原願と分割願に関与することが、手続上の違法事由(忌避・除斥等)を構成するか。 3. 引用発明と同一であるとして新規性を否定した原審の事実認定に、審理不尽等の違法があるか。
規範
1. 原願と分割願は法的に別個の事件であり、同一の審査官または審判官が両者の審査・審判に関与したとしても、特許法上の制限規定に抵触しない。また、審判官が分割を示唆した事実のみでは、直ちに忌避理由(特許法139条各号、141条等)があるとは認められない。 2. 引用発明に基づく新規性の判断において、技術的構成が実施可能な状態で示されている場合には、これと同一の出願発明は特許を受けることができない。
重要事実
上告人は、原願の発明を6つに分割したうちの一つ(本件発明)について出願したが、拒絶査定を受けた。上告人は、①原願の拒絶査定が違法であること、②原願と分割願に同一の審判官が関与したこと、③審判官が分割を示唆したことが不公正であることを理由に、拒絶審決の取り消しを求めた。また、本件発明が引用発明(乙1号証)と同一であり新規性を欠くとした原審の判断に、技術的な実施可能性の検討不足等の不備があると主張した。
あてはめ
1. 審判の対象は本件分割願の拒否の適法性であり、別個の事件である原願の拒絶査定が仮に違法であっても、本件審決を当然に違法とするものではない。 2. 原願と分割願が別個の事件である以上、同一の審判官の関与は法に違反しない。分割の示唆も忌避理由には当たらない。 3. 原審は、本件発明が乙1号証と「カムプレートに一個のニッティングカムを取り付け…」等の構成において同一であり、かつその構造が実施不可能とは認められないと判断した。これは裁判官の有する通常の知識に照らした合理的な判断であり、追加の証拠調べがなくても審理不尽とはいえない。
結論
本件分割願の拒絶を維持した審決に違法はなく、上告を棄却する。本件発明は引用発明と同一であり新規性を有しないため、特許を受けることができない。
事件番号: 昭和32(オ)988 / 裁判年月日: 昭和36年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】分割出願は元の出願(原願)とは別個の事件であり、原願の拒絶査定に違法があるとしても分割願の拒絶査定を直ちに違法とするものではなく、また、同一の審判官が双方に関与しても法に抵触しない。 第1 事案の概要:上告人は原願の発明を6個に分割して出願したが、そのうちの一つの発明について拒絶査定を受け、審判で…
実務上の射程
特許制度における「原願と分割願の独立性」を再確認する。分割を勧めた審判官の適格性や、審判における職権的な技術判断の許容範囲を示すものとして、実務上は審査手続の公正性や事実認定の適法性を争う際の反論根拠として機能する。
事件番号: 昭和32(オ)984 / 裁判年月日: 昭和36年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】分割出願の拒絶査定の適法性は、原出願の拒絶査定の適否とは別個に判断される。引用発明と根本的な技術思想が同一であれば、単なる材質の変更による耐久性の向上などは新規性を基礎付けず、引用例の一部が実施可能であれば、装置全体としての実施可能性を審理せずとも新規性を否定できる。 第1 事案の概要:上告人は原…
事件番号: 昭和32(オ)985 / 裁判年月日: 昭和36年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】分割出願の適法性は原出願の拒絶査定の適否に左右されず、公知の技術的手段を単に置換したに過ぎない発明は、特段の新規な発明思想を含まないため新規性が否定される。 第1 事案の概要:上告人は、原出願を6個に分割したうちの1つとして、家庭用編物機の機体を台板等に起伏自在に取り付ける発明につき特許出願を行っ…
事件番号: 昭和32(オ)987 / 裁判年月日: 昭和36年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】発明の新規性判断において、公知・慣用の各部分装置を組み合わせた発明は、それらの単なる寄せ集めに過ぎず、総合により独自の効果を生じない限り、新規性を有しない。また、発明の要旨認定は、特許請求の範囲の記載のみならず、明細書及び図面の全体の記載を総合して判断されるべきである。 第1 事案の概要:上告人は…
事件番号: 昭和41(行ツ)106 / 裁判年月日: 昭和43年5月2日 / 結論: 棄却
公知の装置の構造につき一定の数値的限定を与えるものが特許に値する発明と認められるためには、それによつて、その装置から当業者の技術水準によつては予想できないような高度の効果を発揮させる構想でなければならない。