判旨
一筆の宅地を分割して払い下げる際、各譲受人が従前の私道部分を存置させ、相互に利用を忍容する了解があったと認められる場合には、通行地役権設定の黙示の意思表示があったと解される。
問題の所在(論点)
分筆・払下げられた土地の所有者間において、明示の契約書等が存在しない場合に、私道部分につき通行地役権設定の黙示の意思表示があったと認められるか。
規範
地役権設定契約(民法280条)の成立には、必ずしも明示の合意を要しない。分筆・譲渡の経緯、土地の地形的関係、従前からの利用状況、譲渡人の意向、および譲受人側の認識等の諸事情を総合考慮し、各土地所有者が互いに私道部分を従前通り存置させ、他者の利用を忍容するとの了解が認められる場合には、相互に通行地役権を設定する旨の暗黙の意思表示があったものと認めるのが相当である。
重要事実
国が所有していた280坪の宅地には、当初から私道(甲乙丙丁戌)が存在し、居住者らに利用されていた。国がこの宅地を5筆に分筆して払い下げる際、国の代行機関は従前の使用状況を変更せず各譲受人が継続利用できるような処置をとる意向を示していた。払下げ後も数年間、利用状況に変化はなく、対価の支払いもなされていなかった。一方、上告人が私道敷地を自己のためのみに使用することを関係者に表明した事実はなかった。
あてはめ
本件では、(1)分筆前から私道が存在し宅地として一体利用されていたこと、(2)国の払下げ方針が従前の利用形態の維持を前提としていたこと、(3)払下げ後も長期間無償で通行が継続されていたという事実がある。これらの諸事情を総合すれば、各譲受人は私道敷地を従前通り存置し、相互に利用を忍容する了解のもとで払下げを受けたといえる。したがって、各自の所有地につき、相互に他の所有者のための通行地役権を設定する旨の黙示の意思表示があったと評価できる。
結論
本件各土地の所有者相互間で、各私道敷地上に通行地役権を設定する旨の黙示の合意が成立しており、通行地役権は有効に成立する。
実務上の射程
土地の分筆譲渡に伴う通行権の紛争において、囲繞地通行権(民法210条等)の成否が問題となる場面であっても、本判例を引用することで、より強力な権利である地役権の黙示の成立を主張することが可能となる。特に、分筆前の利用状況や分筆時の譲渡人の意向・説明、その後の平穏な利用継続といった客観的事実から「了解」を推認する手法は、実務上の立証指針として重要である。
事件番号: 昭和31(オ)311 / 裁判年月日: 昭和33年2月14日 / 結論: 破棄差戻
民法第二八三条にいう「継続」の要件をみたすには、承役地たるべき土地の上に通路の開設があつただけでは足りず、その開設が要役地所有者によつてなされたことを要する。
事件番号: 昭和35(オ)1227 / 裁判年月日: 昭和36年8月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共有地を分筆し、その一部を他者に譲渡した場合において、残余の土地を共有のまま維持する合意が存在したと認められるときは、当該土地について実質的な共有物分割が行われたとはみなされない。 第1 事案の概要:元来、DおよびEの共有に属していた山林(二町五反余)について、明治37年に2筆の土地(b、c)に分…