民法第二八三条にいう「継続」の要件をみたすには、承役地たるべき土地の上に通路の開設があつただけでは足りず、その開設が要役地所有者によつてなされたことを要する。
通行地役権時効取得における「継続」の要件
民法283条
判旨
民法283条にいう通行地役権の時効取得における「継続」の要件を満たすためには、承役地たる他人所有の土地の上に通路が存在するだけでなく、その通路が要役地所有者によって開設されたものであることを要する。
問題の所在(論点)
通行地役権を時効取得するための民法283条の要件である「継続」を満たすためには、通路が誰によって開設される必要があるか。単なる通行の事実や既存の通路の利用だけで足りるかが問題となる。
規範
民法283条が地役権の時効取得について「継続し、かつ、表現のもの」に限ると規定する趣旨は、承役地所有者の認識可能性を確保し、不意打ちの不利益を防止する点にある。したがって、通行地役権の「継続」要件を満たすには、単に通路が存在するだけでは足りず、その通路が要役地所有者によって開設されたものであることを要する。
重要事実
被上告人は、昭和10年当時から一般の通路であると信じて被上告人所有地(要役地)から公路に出入するため10年以上通行を続けていた。当該空地(承役地)には当時既に通路が設けられていたが、原審は当該通路が誰によって開設されたかという事実を確定しないまま、10年以上の通行および他者からの異議がなかった事実のみを根拠に、通行地役権の時効取得を認めた。
あてはめ
本件において、原審は通路の存在および被上告人による10年以上の通行事実、さらに上告人らから異議がなかった事実にのみ基づいて時効取得を肯定している。しかし、通路が要役地所有者である被上告人によって開設されたか否かという点は明らかにされていない。最高裁の規範によれば、要役地所有者による通路開設が「継続」要件の不可欠な要素である。したがって、通路の開設主体を審理せずに時効取得を認めた原審の判断には、民法283条の解釈誤りおよび審理不尽の違法がある。
結論
通行地役権の時効取得を認めた原判決には民法283条の解釈の誤りがあるため、破棄を免れない。通路の開設主体に関する審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
通行地役権の時効取得を論じる際の必須のリーディングケースである。答案上は、まず民法283条を挙げ、所有権の時効取得(162条)との対比から、承役地所有者への不意打ち防止という趣旨を述べた上で、「要役地所有者による通路開設」という規範を導く。実務上、通路開設が困難な場合に、他者が開設した通路の維持管理(補修等)を自ら行ったことが「通路開設」に準ずるかという論点(後年の判例で肯定)へと展開する出発点となる判例である。
事件番号: 平成6(オ)414 / 裁判年月日: 平成6年12月16日 / 結論: 棄却
公道に接する土地を所有する甲が、乙に対して右公道の拡幅のためにその所有地の一部を提供するよう働きかける一方、自らも所有地の一部を提供する等の負担をし、甲のこれらの行為の結果として、右公道全体が拡幅され、乙の右所有地も拡幅部分の一部として通行の用に供されるようになったなど判示の事実関係の下においては、乙の右所有地について…
事件番号: 昭和32(オ)827 / 裁判年月日: 昭和35年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】一筆の宅地を分割して払い下げる際、各譲受人が従前の私道部分を存置させ、相互に利用を忍容する了解があったと認められる場合には、通行地役権設定の黙示の意思表示があったと解される。 第1 事案の概要:国が所有していた280坪の宅地には、当初から私道(甲乙丙丁戌)が存在し、居住者らに利用されていた。国がこ…